最新記事

ヘルス

中性脂肪が増え過ぎて血が乳白色になった!

Man’s Blood So Thick With Fat it Turned Milk-colored

2019年2月27日(水)16時30分
ハナ・オズボーン

油の摂り過ぎに注意(写真はラード) canyonos/iStock.

<病院に駆け込んだ男性の血は、色が乳白色に変わっていた。血液中に脂肪が増え過ぎたためだ>

2月25日付けの学会誌「内科学会紀要」によると、患者は39歳のドイツ人男性。ドイツのケルン大学病院の救急外来を訪れたこの患者は、吐き気や嘔吐、頭痛、倦怠感などを訴えたほか、意識レベルが徐々に低下していった。この2日前にも、体重の減少、嘔吐、頭痛などの症状で診察を受けていた。

患者は以前、糖尿病と診断されており、胆石の病歴もあった。断続的ながら、さまざまな種類の処方薬を服用していたのも特徴だ。オンライン科学誌ライブサイエンスによると、患者は病院で意識を失い、呼吸管を挿入する必要があったという。

血液検査の結果、この患者はトリグリセリドと呼ばれる中性脂肪の血中値が異常に高いことが判明した。正常値の上限が150mg/dLなのに対し、この患者の中性脂肪値は1万4000mg/dLだった。トリグリセリド値があまりに高かったため、この患者の血液は乳白色に変色していたと、ライブサイエンスは伝えている。

blood-milk-color.jpg
これが血!? Copyright © 2019 American College of Physicians. Used with permission. ANNALS OF INTERNAL MEDICINE

患者は高トリグリセリド血症と診断された。これは血液中のトリグリセリドの値が高いタイプの脂質異常症を指す病名だ。

脂肪が多過ぎて機械詰まる

医師たちは最初、血漿交換の装置を使って過剰な中性脂肪を患者の血液から取り除こうとしたが、脂肪が多過ぎて機械が詰まってしまうため、異例の手動に切り替えなければならなかった。

まず、患者から1リットルの血液を採取し、健康な血液と置き換えることで、トリグリセリドの血中濃度を下げる処置を行った。その後、さらに血液を採取し、代わりに血液代用液を注入した。この結果、患者のトリグリセリド値は、機械による脂肪除去が可能なレベルにまで下がり、今度は機械を詰まらせることもなかった。

ライブサイエンスの記事の取材に応じた心臓専門医のガイ・ミンツは、この処置を「創意工夫に満ちた治療の例」だと称賛。「前例にとらわれない発想で患者の命を救った」とコメントした。

医療情報サイトのウェブMDによると、高トリグリセリド血症と診断された人が血中の中性脂肪値を下げるには、いくつかの方法がある。減量、禁煙、節酒、砂糖の摂取量を減らす、毎日運動をする、などだ。

(翻訳:ガリレオ)

※3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:ニューサム氏ら民主党有力州知事、「反トランプ

ワールド

チリ大統領選で右派カスト氏勝利、不法移民追放など掲

ワールド

ボルソナロ氏の刑期短縮法案に反対、ブラジル各地で抗

ビジネス

26年度賃上げスタンス、大半の支店で前年度並みとの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中