最新記事

メディア

ミャンマー国軍最高司令官、朝日新聞の記事に抗議 単独会見記事の事前確認、朝日側「約束した認識はない」

2019年2月25日(月)13時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

メディア委が近く実態調査に

newsweek_20190225_130118.jpg

ミン・アウン・フライン司令官のWebサイトにはミャンマー語と英語で朝日新聞との会見内容の全文、とされる記事が掲載されている。

ミン・アウン・フライン司令官からの訴えを受けたMPCでは3月1日に事実関係の調査のために「双方から事情を聞きたい」としている。

2月15日の朝日新聞には貝瀬アジア総局長と染田屋支局長による連名の記事が掲載されている。

日本の新聞社、テレビなどの場合、海外の元首、大統領や首相、キーマンとなる最高レベルの軍人などの会見が単独で可能となった場合は、本社から部長や編集局長などの幹部あるいは地域を統括する総局長などが同伴して「社を挙げての単独会見」をアピールすることがよくあり、今回も朝日新聞としては力の入った「単独会見記事」だったことがわかる。

しかし、取材が難しいとされるミャンマー軍司令官との単独会見のわりには紙面の扱いは地味で、3面左肩に約3段見出しで「『軍人の議会参加必要』ミャンマー国軍最高司令官」「民主化への改憲 否定的」と本記が掲載されている。さらに3面を受ける形でインタビュー詳報が国際面のトップで「政治への関与 譲らぬ軍」「スーチー氏側を牽制 国際社会と溝深く」「難民の帰還 厳格な審査言及」などの見出しで掲載されている。

司令官の意見が反映されず不満か

ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン司令官は自らのホームページで朝日新聞とのインタビューの全文を英語とミャンマー語で掲載、公開している。

そこにはミン・アウン・フライン司令官がスー・チー顧問によって進められている憲法改正に全面的にそれも闇雲に反対している訳ではなく、理路整然と軍の主張を繰り返していることが記録されている。

さらにロヒンギャ問題に関して朝日新聞側は「これは質問ではなく個人的意見である」と断った上で「一部の人々は意図的にミャンマーや国軍を一方的に批判しているがこれは公平ではないと思う」と述べ、「(バングラデシュ側にある)難民キャンプを取材したが、難民の証言は事実ではない」との見解を示すなど、国軍の行動を追認、支持するかのような趣旨の誤解を招きかねない表現を使っていることも明記されている。

この点に関して朝日新聞社広報部(東京)は2月25日、「今回のインタビューで国軍の行動を是認する意図はありません」との見解を示している。

こうした長尺のインタビューにも関わらず、朝日新聞の掲載された記事では「憲法改正に反対」「ロヒンギャ問題で反論」など発言の一部だけが切り取られて記事化されていることに司令官、軍が不満をつのらせ、実際は事前の原稿チェックの約束は朝日新聞と司令官の間にはなかったものの、「約束違反だ」と主張している可能性もあると現地のミャンマー人記者たちはみているという。

いずれにしろ、MPCによる今後の調査でなんらかの打開策が見出されるのか、朝日新聞側の対応を含めて成り行きが注目される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中