最新記事

睡眠

睡眠時の無呼吸、放置は危険、記憶障害やうつの危険が潜む

2019年2月8日(金)17時10分
松丸さとみ

CPAP(持続陽圧呼吸療法)を使った治療が効果的と言われる BVDC-iStock

<オーストラリアの研究チームが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)を患っていると記憶力に問題が生じ、うつ病に発展する危険性があると発表した>

睡眠時の無呼吸、記憶障害とうつに

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、寝ている間に息が止まるなどして呼吸が阻害される症状だ。なかでも肥満などが原因で上気道が閉塞されて起こるものを閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)といい、世界で9億3600万人がこの症状を患っていると言われている。

オーストラリアのメルボルンにあるRMIT大学はこのほど、OSAの症状があるものの治療を受けたことがない人が、どの程度の記憶障害を抱えているかを調査。OSAを患っていると記憶力に問題が生じ、うつ病に発展する危険性があると発表した。

今回調査を行なったのは、RMIT大学のメリンダ・ジャクソン博士率いるチームだ。

これまで、OSAの人は記憶力に問題がある場合が多く、うつ病になる割合も高いと指摘されてきた。2014年に発表された調査では、OSAの人の46%にうつの症状が見られた。

ジャクソン博士は、うつと記憶には深い関係があると説明。人生で起こったことの詳細をあまり覚えていない(自伝的記憶が乏しい)場合、なかなか治らないうつ病へと発展するリスクがあるとされているため、これを足場として今回の調査を行なったと述べている。

なお「自伝的記憶」とは、個人の人生における経験に関する記憶を意味する。

OSAの人は人生の細かい点を思い出せない

調査では、OSAを患っているが治療していない成人44人のグループと、健康的な成人44人からなるコントロール・グループを比較した。実験参加者には、子供時代、青年期、そして現在とそれぞれの時期にあったさまざまな出来事を思い出してもらった(自伝的記憶)。

その結果、OSAを患っている人の記憶は、そうでない人の記憶と比べ著しく概括的(つまり詳細まで覚えていない)ということが分かった。記憶が概括的すぎて詳細まで覚えてない割合は、コントロール・グループが18.9%だったのに対し、OSA患者のグループは52.3%だった。

調査チームはまた、自伝的な意味記憶とエピソード記憶をそれぞれどれだけ思い出せるかも調査した。意味記憶とは、事実や概念に関する記憶のことで、ここでいう自伝的な意味記憶とは例えば学校の先生の名前などが該当する。一方でエピソード記憶とは、実際の出来事に関する記憶で、例えば高校生活初日の思い出などだ。

OSAを患っている人は、意味記憶をなかなか思い出せなかったものの、エピソード記憶は維持できていた。調査チームによると、自伝的な意味記憶を安定させるには良質な睡眠が不可欠であるため、OSAの人が意味記憶を維持できない原因は、呼吸で阻害されることにより睡眠が断片的になっていることが原因と考えられるという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏のイラン合意状況整備に期待、軍事行動回避

ワールド

ロシア、米との経済協力分野選定 ウクライナ戦争後見

ワールド

NATO国防相会議、米長官は欠席 事務総長は防衛投

ワールド

トランプ関税、「ほぼ全額」を米国民が負担 NY連銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中