最新記事

温暖化

南極の氷河の下に巨大な空洞が発見される

2019年2月5日(火)15時30分
松岡由希子

氷河の下に巨大な空洞が発見された NASA/Goddard Space Flight Center

<南極大陸西部にあるフロリダ州とほぼ同じ大きさのスウェイツ氷河が、急速に溶けていて氷河の下に巨大な空洞が存在することが明らかになった>

南極大陸西部に位置し、南極海の海域のひとつであるアムンゼン海に流れ込むスウェイツ氷河の下に巨大な空洞が存在することが明らかとなった。

マンハッタン島の3分の2に相当する大きさの空洞も発見

アメリカ航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)を中心とする共同研究チームは、2019年1月30日、オープンアクセスジャーナル「サイエンス・アドバンシーズ」において、「1992年から2017年にかけて、スウェイツ氷河の流動速度が加速し、氷が薄くなり、氷河と海との境界線が後退している」との研究論文を発表した。

この観測では、スウェイツ氷河の下で、米ニューヨーク市マンハッタン島の3分の2に相当する大きさの空洞も発見された。その高さはおよそ1000フィート(約305メートル)で、140億トン分の氷を擁しており、そのほとんどは過去3年で溶けたとみられている。

matuoka0205a.jpg

スウェイツ氷河 NASA/OIB/Jeremy Harbeck

氷河の下の熱と水がより増えれば、融解はより速く進む

今回発見された空洞の規模と急速な進行度合いには、共同研究チームも驚いており、研究論文の筆頭著者であるピエトロ・メリロ博士は「スウェイツ氷河の下の空洞の規模は、氷河の融解に重要な役割を果たしている。氷河の下の熱と水がより増えれば、融解はより速く進むだろう」と述べている。

研究者たちは、長年「スウェイツ氷河では氷と岩盤との間に隙間が存在し、ここに海水が下から流れ込んで氷河を溶かしているのではないか」と考えてきた。

スウェイツ氷河は地球の海面上昇の約4%を担っている

今回の観測では、極地と気候システムとのつながりを研究するNASAの専門プロジェクト「オペレーション・アイスブリッジ」の飛行機に搭載された専用レーダーの測定データに加え、イタリア宇宙機関(ASI)の小型地球観測衛星「コスモスカイメッド」やドイツ航空宇宙センター(DLR)の地球観測衛星「タンデムエックス」の合成開口レーダー(SAR)からのデータも使用し、これらの超高解像度データをレーダー干渉法で処理することで、氷河下の地表がどのように移動したのかを分析することに成功した。

米国のフロリダ州とほぼ同じ大きさのスウェイツ氷河は地球の海面上昇の約4%を担っており、すべての氷が溶けると地球の海面が2フィート(約61センチ)以上、上昇するとみられている。

アメリカ国立科学財団(NSF)とイギリス自然環境研究会議(NERC)は、その特徴とプロセスを解明するべく、「国際スウェイツ氷河共同研究(ITGC)」を共同で立ち上げ、2019年から2020年の夏シーズンにフィールド調査を開始する計画を明らかにしている。

気候変動に伴って地球の海面上昇がどれくらいのペースで進行するのかを予測するうえでも、南極の氷河の底をさらに詳しく研究する必要がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB当局者内に利上げ予測、利下げ幅見通しも縮小=

ビジネス

パウエルFRB議長、後任承認まで続投の可能性を示唆

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、2会合連続据え置き パウエル議長「中東情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中