最新記事

ヘルス

女性の脳は男性の脳より3歳若い

The "Younger" Brains of Women

2019年2月27日(水)14時30分
カシュミラ・ガンダー

高齢の女性は判断力や記憶力などのテストで同年齢の男性より点が高い傾向がある Bulat Silvia/iStock.

<脳のスキャンによって男女間で脳代謝年齢に差があることが分かった>

女性の脳のエネルギー代謝の老化が男性より遅いとする研究が発表された。認知機能の低下も女性のほうが遅い傾向があることも、これで説明できるかもしれない。

米ワシントン大学医学大学院(セントルイス)の研究チームは脳の老化を解明しようと、実年齢と脳の代謝年齢を男女間で比較した。すると、女性の脳年齢は男性より3歳若いという結果が出た。

この調査には、健康な脳を持つ20~82歳の205人が参加。彼らの脳を、PET(陽電子放射断層撮影)でスキャンした。研究チームはまず、被験者の実年齢と脳代謝の関係を見つけるアルゴリズムを作成した。その結果、成人若年層の女性の脳は同年齢の男性より若く、年を取ってもこの傾向が続いていた。

これまでの研究でも、女性の脳は男性より神経認知機能が衰えにくいことが分かっている。これは女性のほうが、脳のエネルギー源であるブドウ糖の消費に関係する遺伝子が年齢の影響を受けにくいためかもしれない。あるいは、思春期後の女性の脳の血流が男性ほど減少しないためである可能性もある。

この研究報告の主要筆者の1人であるマヌ・ゴヤルは「男性の脳は老化が速いという意味ではない。成人した時点で、男性は女性より代謝年齢が約3歳高く、その差が生涯を通じて維持されるということだ」と説明する。「高齢女性の認知機能の衰えが男性より遅いのは、実際に脳が男性より若いのかもしれない。その点について、さらに研究を進めたい」

ゴヤルによれば、男女の脳の年齢差は「かなり大きい」が、「他の性差、例えば身長差などに比べればはるかに小さい」という。研究チームは次のプロジェクトとして、高齢の女性が判断力や記憶力、問題解決能力など脳についてのテストで同年齢の男性より得点が高い傾向にある理由を調べるという。

「人が2人いれば何らかの差異があるが、それらはたいてい無視できる程度のものだと、多くの研究が論じ続けている」と、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の精神科医マイケル・ブルームフィールドは言う。「だからこそ、これだけ多くの数の脳のスキャンを基にした研究は重要だ」

<本誌2019年02月26日号掲載>

※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

機械受注6月は前月比3%増、3カ月ぶりプラス 判断

ビジネス

FRB議長が住宅業界に「深刻な打撃」とトランプ氏、

ビジネス

貿易収支、7月は予想に反し赤字転落 対米自動車輸出

ビジネス

壁際なのに「窓側料金」、乗客がデルタとユナイテッド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中