最新記事

アメリカ経済

痛恨のアマゾン第2本社撤回、「もう企業きてくれない」とNY州が反対議員を猛批判

NY Budget Director Shames Lawmakers Who Opposed Amazon

2019年2月26日(火)16時21分
スコット・マクドナルド

ロングアイランドシティでアマゾン第2本社に反対する人々(2月14日) Shannon Stapleton-REUTERS

<多くの雇用と税収を失うことになった責任は、アマゾンの計画に賛成だった多くのニューヨーカーにもある。「声なき多数派」が「雄弁な少数派」に負けたのだ>

ニューヨーク州のロバート・ムヒカ予算担当官は2月22日に公開書簡を発表し、ニューヨーク市に第2本社の一部を建設しようとしたアマゾンの計画に公然と反対した連邦議員や州議会議員、一部の組合を激しく非難した。

ムヒカはアマゾンの計画について、ニューヨークにとって過去25年で「唯一最大の経済開発のチャンス」だったと指摘。アマゾンが進出を諦めたことで、いつかニューヨーク州で事業を展開したいと考えていた企業も二の足を踏むだろう。ツイッターで巻き起こった反対を理由に計画に反対した人々は、経済のことが分かっていないと主張した。

公開書簡は州知事のウェブサイトに掲載された。アマゾンの件から教訓を得てもらうためだと彼は言う。

「我々は最終的に270億ドルの収入と2万5000~4万人分の雇用を失い、『企業の受け入れに前向き』だという評判にも大きな傷がついた」とムヒカは書いている。「計画に反対した組合が得たものは何もなく、彼らはほかの組合の組合員から1万1000人分の高賃金の仕事を奪った」

「数学と経済学の基礎も分かっていない」

ムヒカは、アマゾン側に提供されることになっていた助成金や税優遇措置は別のところに投資すべきだと主張した政治家たちは、数学や経済学の基礎も「わかっていない」と批判した。

「驚くことに、計画に反対の市や州の当局者たちは、アマゾンが助成金として受け取る30億ドルは住宅や交通部門にまわした方が有益だっただろうと言っていた」とムヒカは書いている。「これは見え透いた嘘であり、基本的な数学を根本から無視した発言だ。市と州はアマゾンに何も『与えて』はいない」

ムヒカによれば、アマゾンが市と州にもたらす税収は(同社が得る30億ドルの9倍の)270億ドルにのぼる見込みだった。最大30億ドルの税制優遇措置も、2万5000~4万の雇用が生まれれば、という条件だった。「州の予算担当官でなくとも、9倍のリターンが得られる投資が成功だということは分かるはずだ」

彼は、アマゾンの第2本社をめぐって北米200超の都市が誘致を競っていた時には提案に合意しておきながら、後になって反対の声を上げた一部の議員を強く非難した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中