最新記事

アメリカ経済

痛恨のアマゾン第2本社撤回、「もう企業きてくれない」とNY州が反対議員を猛批判

NY Budget Director Shames Lawmakers Who Opposed Amazon

2019年2月26日(火)16時21分
スコット・マクドナルド

「これらの一部議員たちは、アマゾンがロングアイランドシティに第2本社を建設することを支持する書簡に署名していた。ツイッター上で反対の声が上がるまでは、みんな計画を支持していた」とムヒカは書いている。「一部強硬な反対意見は常にあるものだが、今回のケースでは彼らが異様な力をもった。州議会上院は意思決定の権限を反対派の一人の上院議員に移譲し、さらに彼を同計画への融資の承認を行う委員に任命した。これでアマゾンは、計画の見通しは暗いと考えた」

ムヒカは、反対した政治家たちを何も考えずに車を追いかける犬にたとえた。

「アマゾンが撤退を表明してから彼らが学んだとおり、計画への反対は優れた政治でさえなかった。彼らは車を追いかけて、追いついてしまった犬と同じだ。今なんとかして自分たちの行動を説明しようとしているが、説明ができずにいる」と彼は指摘した。

ムヒカは州議会で働いて23年になるが、その間に同州がまとめたアマゾンの次に大規模な経済開発プロジェクトが創出した雇用はわずか1000人分だったと語る。アマゾンが創出する見通しだった雇用に比べるとケタ違いに少ない。

「雄弁な少数派」に負けた

ニューヨーク州ではほかに複数の都市がアマゾンの第2本社建設計画に入札を行ったが、その全ての仲介を行ったのがニューヨーク州開発公社だ。同公社は、地元コミュニティーや地元議員が支持した計画のみを支援したとしている。

ロングアイランドシティの計画は準備も万端で、ニューヨーカーたちからも祝福を受けていた。そのため入札で勝つのは簡単だったが、後になって一部の議員が、ムヒカが「雄弁な少数派」と称する人々を擁護して反対の声を上げた。

「アマゾンの計画を支持し、今は怒りに燃えている70%のニューヨーカーたちにも責任はある。彼らは『声なき多数派』は『声を上げなければならない』ことを学ぶべきだ。そうしなければ雄弁な少数派や利己的な政治家たちに負けてしまうのだから」とムヒカは述べている。

さらに彼は、市と州がとてつもなく大きな損をすることになった原因は、一部の議員が「責任ある統治」を行わずに政治ゲームに走ったからだと指摘した。

「アマゾンの建設計画を失ったことは、(ロングアイランドシティを含む)クイーンズ区にとって大きな打撃であるだけでなく、ニューヨーク州全域にとって打撃となり、地元選出の全ての議員の汚点になる」

ロングアイランドシティへの建設計画を撤回したアマゾンは今後について、別の候補地を探す予定はないと表明。第2本社については、ニューヨークとバージニア州の北部に分割して建設する計画だったため、今後はバージニア州北部への建設計画を進めていくとしている。

(翻訳:森美歩)

※3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランスネフチ、ウクライナのドローン攻撃で石油減産

ワールド

ロシア産エネルギーの段階的撤廃の加速提案へ=フォン

ワールド

カーク氏射殺事件の容疑者を起訴、検察当局 死刑求刑

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中