最新記事

米中貿易

米中貿易、対中追加制裁発動なら米雇用最大200万人減?

US, China Trade War Puts 2 Million Jobs At Risk In America

2019年2月12日(火)17時57分
ケイリャン・クマー

GMの工場閉鎖に抗議する労働者たち(ミシガン州デトロイト、1月18日) Rebecca Cook-REUTERS

<関税という手段でアメリカの製造業を活性化しようというトランプの試みは裏目に出る>

米中の貿易戦争が続けば、アメリカでは少なくとも200万人の雇用が失われる可能性がある。トランプ政権がすべての中国製品に対する関税を3月2日から25%に引き上げる最悪のシナリオに則って警告を発した。

この数字は、対中貿易戦争による影響と、中国以外の国々との貿易問題について検証した新たな研究レポートで明らかになった。

だがこのレポートが発表される直前には、アメリカ政府が好調な雇用統計を公表したばかり。1月の雇用者数が前月比で市場予想を大きく上回り、30万4000人増になった。

アナリストのなかには、雇用が200万人減少するというこのレポートは「誇張されている」とする者もいる。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で貿易問題を専門とするスコット・ケネディはこのレポートについて、「雇用への影響を誇張している可能性が高い」とし、中国が必要な構造調整を行った場合にアメリカ側に発生する新たな雇用者数を考慮していないと述べた。

この研究レポートは、ワシントンの自由貿易を推進するロビー団体トレード・パートナーシップ・ワールドワイドが作成した。

このレポートが明らかにしているのは、関税を使ってアメリカの製造業を活性化しようとするトランプ政権の意図は裏目に出るということだ。

アメリカの輸出に悪影響

レポートは、中国や欧州連合(EU)、カナダ、メキシコが、アメリカからの輸出品に関税を課せば、アメリカの輸出産業が打撃を受けると指摘する。アメリカが輸入する部品に関税がかけられれば輸入部品の価格が高騰し、アメリカ製品の輸出競争力が弱まるからだ。

リポートは、中国に対する関税引き上げによるGDP(国内総生産)や家計、雇用への悪影響と、報復関税によるコスト増に鑑み、複数のシナリオを提示している。景気低迷は1年から3年ほど続く可能性があると指摘する。

最悪のシナリオでは、GDPは1.04%低下し、200万人の雇用が失われる。

米中貿易交渉がどのような結果になるかはわからない。ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談が2月27日と28日に行われることになって関心が薄れているのも1つの懸念材料だ。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏で財政緊縮巡りデモ・スト、100万人参加と労組 

ワールド

国連安保理、ガザ停戦決議を否決 米が6回目の拒否権

ワールド

人民元相場、米国よりも欧州にとってより大きな問題=

ビジネス

SBG「ビジョン・ファンド」、2割レイオフへ AI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中