最新記事

人権問題

共産党の網をかいくぐりウイグル支持の輪は広がる

2019年2月22日(金)15時00分
水谷尚子(中国現代史研究者)

漢人からの収容所情報

米NASAで研究者として活躍しているウイグル人物理学者エリキン・スデックは、ウルムチから入手した情報として1月12日に以下の内容を公表した。

「先週、12カ国の外交官らがウルムチを訪問した際に、当局は一部の住民に対して、次の日からモスクへ行って以前のように礼拝するよう命じた。『中国共産党の指示で礼拝をやめたのに』と断った住民らに対して、警察は『党の今の命令は礼拝をすることだ』と命じた。翌日、命令どおりにモスクへ行くと、監視カメラが全て撤去され、モスク内にはクルアーン(コーラン)が置いてあった。外国訪問団は、2日間の滞在中にモスクを訪問した。3日目に住民らがモスクへ行くと、そのモスクは閉鎖されていた。住民らは警察に、党の命令で礼拝に来たと伝えると、『任務は完了した、二度と来るな』と追い返された」

体制批判をするのはウイグル人だけではない。1月15日、台湾最大のネット掲示板に、イリ地方の中心都市グルジャに勤務する漢人警察官の妻と称する人物が、収容施設の詳しい状況を投稿。新疆情勢を嘆く内容が反響を呼んだ。漢人の中にも同情する者が増えており、ウイグル人の安否情報をこっそり流すのは新疆在住の漢人だったりする。

アブドゥレヒムの映像公開は、まるでテロ組織ISIS(自称イスラム国)が人質生存ビデオを流すのと同じ行いとして世界中のウイグル人に捉えられた。彼らは「であれば、私たちの肉親の生存証明を出せ」とネット上で憤りを表明した。

中国政府はプロパガンダの一環として、中国服姿のウイグル人の子供の写真まで公開している。それでも深刻な人権侵害への包囲網は、中国政府の想像を超えて広がりつつある。

<本誌2019年02月26日号掲載>

※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・メキシコ、北米貿易協定見直しプロセスを再来週開

ワールド

トランプ氏、ネタニヤフ氏の恩赦を再度要求

ビジネス

EBRD総裁、トルコのインフレ対策を評価

ビジネス

中銀の独立性、インフレ抑制に「極めて重要」=米シカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリングが新作『ピリオン』で見せた「別人級」の変身
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 8
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中