最新記事

商用ロケット

初打ち上げとなるか、飛行機からの空中発射ロケット「ランチャーワン」

2019年1月23日(水)16時50分
秋山文野

空中発射ロケット「ランチャーワン」を取り付けた母機コズミック・ガール photo:Virgin Orbit

<リチャード・ブランソンの航空機を母機とするロケット「ランチャーワン」打ち上げが、今年は実現しそうだ>

ワシントン・ポスト紙のクリスチャン・ダベンポート記者による『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』には、宇宙ビジネスを追求する大富豪として、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスクだけでなくリチャード・ブランソンが登場する。

ブランソンは、熱気球、鉄道、航空機と冒険的な乗り物を追い求め、宇宙船開発前から「ヴァージン・ギャラクティック」の企業名を考案し登記していた。そして、マイクロソフトの創業者ポール・アレンが出資した宇宙船「スペースシップ1」が2004年にXプライズで高度100キロメートルの宇宙へ到達すると、すぐさま「宇宙旅行ができる機体へ発展させよう」とポール・アレンに持ちかけた。

その後、「スペースシップ2」と名付けられた乗客6人登場可能な宇宙船は、開発期間の長期化、死傷事故などのハードルを乗り越えて2018年12月に高度82.7キロメートルの宇宙(宇宙空間の始まりとされる高度は複数あり、米空軍の基準を採用すれば80キロメートルから宇宙になる)に到達した。商業運航は「まもなく」とブランソンはこれまで何度も口にしていたが、確かに間近に迫っていると言えそうだ。

29377433_1.png

『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』クリスチャン・ダベンポート

「人工衛星のことなど考えたこともなかった」ブランソンだが ......

ヴァージン・ギャラクティックは、商業運航を開始できずに宇宙船の開発期間が長期にわたったため、宇宙旅行以外のビジネスが必要になっていた。ダベンポート記者によれば、ブランソンは「ヴァージン・ギャラクティック設立時には人工衛星(打ち上げ)のことなど考えたこともなかった」とインタビューに答えたという。宇宙旅行というセクシーな事業に熱中し、人工衛星打ち上げという手堅い宇宙ビジネスには当初関心を示さなかったブランソンだが、2007年にスペースシップ2の母機を使って衛星を打ち上げるという構想が生まれた。

アイデアを提供したのはイギリス、サリー大学発の小型衛星ベンチャーで欧州で小型衛星開発を牽引してきたサリー・サテライト・テクノロジーズだ。「ランチャーワン」と呼ばれる空中発射式の小型衛星専用ロケットは、2012年に開発が始まった。

ロケットの空中発射方式は、米オービタル・サイエンシズ(現在はノースロップ・グラマンに吸収された)によるペガサスというロケットが実績を上げている。航空機を母機とすることで、低コストで衛星を軌道投入できる。初期の構想では打ち上げ能力は100キログラム級と小さいものの、打ち上げ価格500万~1000万ドルとしており、当時としては相当に低価格だ。2018年に商用運航を開始したニュージーランドに射場を持つロケットラボのエレクトロンロケットの場合、数キログラムの衛星1機の打ち上げ費用は8万ドルからとなっている。

akino0123b.png

ランチャーワンの飛行経路。出典:LAUNCHERONE SERVICE GUIDE

その後、ランチャーワンを搭載する航空機は、「コズミック・ガール」と呼ばれるヴァージン・アトランティックで使用していたボーイング747へ変更された。衛星の搭載能力は最大500キログラムと増したが、打ち上げコストは1200万ドルとなった。初期の顧客としてNASAから超小型衛星の打ち上げ委託契約も結んでいる。

VirginOrbit_FirstMate_009.jpg

「コズミック・ガール」に取り付けられた「ランチャーワン」 photo:Virgin Orbit

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 5
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 6
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 10
    最高指導者ハメネイ師死亡(イラン発表)、トランプ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中