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Huaweiの任正非とアリババの馬雲の運命:中共一党支配下で生き残る術は?

2019年1月21日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Huaweiのポーランド支社 Kacper Pempel-REUTERS

民間企業Huaweiが追い込まれている運命は、アリババの馬雲の突然引退宣言と共通している。Huawei叩きを喜んでいるのは、実は習近平だ。それが見えないと中共一党支配体制の怖さは見えてこない。

アリババの馬雲とHuaweiの任正非との共通点と違い:「民進国退」か「国進民退」か

昨年12月30日付けのコラム「Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?」では、Huaweiの創業者である任正非がなぜ表彰者100人リストから削除されたのかを、「中国政府との近さ」の違いに基づいて分析した。

今回は、もう少し違った角度から斬り込みたい。

アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)が昨年9月10日に引退表明を正式にしたことは世界の注目を集めた。なぜなのか、その理由に関しても多くの見解が出されていたように思う。

ひとことで言えば、「民間企業として成功し過ぎたから」だ。

一党支配体制を貫く中国は、改革開放に当たって「民進国退」(民間企業が前進し、国有企業が控え目になり後退する)をスローガンに掲げながら、結局はその逆の「国進民退」を実行している。

しかし人民は国有企業の製品を購入せず、民間企業の製品を購入する。一つには人民の税金の上に胡坐をかき、のうのうと生きている国有企業の物など買いたくないからだ。もう一つの理由は、国有企業は即ち中国政府そのものなのだから、中国政府が崩壊しない限り倒産しない。そのため国有企業の従業員は庶民のニーズに必死で合わせてイノベーションを展開しようと死にもの狂いにならなくとも企業が倒産することはないと、高(たか)をくくっているから良い製品が生まれて来ないからだ。

対して民間企業は生き残りをかけて、必死で庶民のニーズを探り当て、その中から「これは成功しそうだ」という方策を練り出して売り出していく。ニーズの調査に余念がないので、当然商売繁盛につながっていくわけだ。

こうして馬雲は次から次へとヒットを飛ばし、アリババはe-コマース(電子商取引)において未曽有の成功を収めた。結果、「インターネット+(プラス)」戦略を進める中国政府を喜ばせたはずだが、そこが一党支配体制のややこしいところ。

政府や党を凌ぐほどの成功を収めてはならないのである。

浙江省にいたときから習近平と仲良くやってきたはずの馬雲でさえ、「身の危険」を感じ始めたのだろう。身を引いたので、100人リストには残った。

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