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Huaweiの任正非とアリババの馬雲の運命:中共一党支配下で生き残る術は?

2019年1月21日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の大手IT企業テンセントの馬化騰CEOも100人リストに残り表彰されているが、彼も大きな犠牲を払って、習近平政権の方針に屈服している。昨年8月にテンセントは当局の命令によりWeGame「モンスタハンター・ワールド」の販売を停止されたのだ。直後の8月30日、教育部など8つの中央行政省庁は「児童青少年の近視を防ぐ実施法案」なる通知を発布し、国家新聞出版署がオンラインゲームの新作やゲーム全体の本数を規制することとなった。

拙著『中国動漫新人類 日本の漫画とアニメが中国を動かす』(2008年)で詳述したように、1980年以降生まれの若者、いわゆる「80后(バーリンホウ)」で日本のアニメや漫画を見ずに育った者はいないと言っていいほど、日本の動漫(アニメと漫画)が中国を席巻していた。中国政府は中国の青少年が「民主や自由」といった日本の精神文化に染まることを恐れ、同じく国家新聞出版総署を使って日本のアニメの放映時間を制限した。

そんな中、ゲームに関してだけは中国産の作品が非常に栄えており、若者たちはテンセント・ワールドに夢中になったものだ。

中国製ならいいではないかと思うだろうが、テンセントは民間企業だ。民間企業が国有企業よりも歓迎されて繁昌すること自体が問題なのである。

今般、テンセントはおとなしく中国政府の規制に従い、販売停止を受け入れた。だからテンセントの馬化騰は100人リストに残って表彰された。

さて、問題はHuaweiの任正非だ。

習近平は「俺の言うことを聞いてハイシリコン社の半導体チップを外販し、中国政府に開放しろ」と迫っているが、任正非は応じていない。

そこで習近平はHuaweiの孟晩舟CFOがアメリカの要求によりカナダで逮捕されたのを「チャンス!」とばかりに受け止めて、Huaweiのために「中国政府として」カナダやアメリカに抗議している。こうすれば、いくらHuaweiでも、中国政府の軍門に下るだろうと計算しているのである。

昨年12月12日のコラム<華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?――中国ハイテク「30年内紛」>で、もしかしたら、孟晩舟をアメリカに売ったのは、Huaweiを苛め抜いてきた国有企業ZTEではないかと書いたが、これはかなりの現実性を持っていることになる。

これを機会に、習近平は任正非をねじ伏せて、屈服させようとしている。民間企業が国有企業を凌ぐということは、一党支配体制ではあってはならないし、習近平にとっては非常に怖い。人民の方が強いことになるからだ。それは一党支配体制を脅かす。習近平が最も恐れているのは人民の声なのだから。

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