最新記事

サイエンス

20世紀後半以降の時代「人新生」を代表するのは鶏の骨?

Hatching a Theory

2019年1月23日(水)17時30分
ハナ・オズボーン(サイエンス担当)

人間は大量の鶏肉を食べる Michael Dalder-REUTERS

<人間が食べる大量の鶏の骨は、やがて化石となって「人新生」を特徴付けるという予測が>

地質時代の年代区分では約1万1700年前から現在までは完新世と呼ばれる。だが21世紀に入り、新しい区分として20世紀後半以降を「人新世(じんしんせい)」と呼ぶ案が提唱されている。人類が地球環境に顕著な影響を及ぼすようになった時代だ。

だとすれば、何の骨が人新世を特徴づける化石になるだろう。

18年末、英王立協会のオンライン学術誌オープン・サイエンスに掲載された論文によると、なんとそれは鶏の骨だ。

人間は大量に鶏を食べる。結果、鶏の骨が大量に埋められることになり、その多くは化石となって残るはずだ。

そんな論文を発表したのは英レスター大学のケリス・ベネット率いるチーム。彼らの調査によると、世界で食用に殺される鶏は少なくとも年間658億羽に上る。「世界で最も広く食べられている肉はチキンで、その骨が家庭ゴミに混じる」と、ベネットは言う。「大規模な養鶏場が世界中にあり、そうした施設でも鶏が埋められる」

しかも鶏の骨には人為的な改変の痕跡がある。鶏肉の消費量が増え始めた1950年代以降、食用鶏の品種改良が急速に進み、骨格、骨の化学組成、遺伝的な特徴が祖先の野生種とは大きく異なる品種が生まれた。

脚と胸の筋肉が急速に発達し、心臓、肝臓などの臓器は相対的に小さくなり、寿命も縮んだ。ブロイラーは「人間の集中的な介入」なしには生存できないと、論文は指摘している。

人為的に改変された鶏の骨は人新世の地層を特徴づける化石になると、ベネットは予測する。ブロイラーは「人新世に初めて登場した特徴的な骨格を持つ種」であり、将来この年代の地層から大量にその骨が出土し、「後世の学者が人新世の指標と見なすようになる」というのだ。

だが鶏の骨の時代は長く続かないかもしれない。最近では植物由来の代用チキンが人気を呼んでいる。「消費者は環境だけでなく、財布にも優しい食品を求めている」と、ベネットは言う。ボブ・ディランが歌ったように、「時代は変わる」のだ。

<本誌2019年01月22日号掲載>

※2019年1月22日号(1月15日発売)は「2大レポート:遺伝子最前線」特集。クリスパーによる遺伝子編集はどこまで進んでいるのか、医学を変えるアフリカのゲノム解析とは何か。ほかにも、中国「デザイナーベビー」問題から、クリスパー開発者独占インタビュー、人間の身体能力や自閉症治療などゲノム研究の最新7事例まで――。病気を治し、超人を生む「神の技術」の最前線をレポートする。

ニューズウィーク日本版 AI兵士の新しい戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月13号(1月6日発売)は「AI兵士の新しい戦争」特集。ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

情報BOX:トランプ米政権がベネズエラ大統領を拘束

ビジネス

米リビアン、25年納車は18%減で市場予想下回る 

ビジネス

加ブルックフィールド、AI開発者向けに独自のクラウ

ワールド

トランプ氏、インドにロ産原油輸入抑制を再要求 「応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── …
  • 5
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 6
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    「対テロ」を掲げて「政権転覆」へ?――トランプ介入…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中