最新記事

話題作

『グリンチ』で名優カンバーバッチが見せた演技力

Why Benedict Cumberbatch Is the Perfect Grinch

2018年12月17日(月)16時05分
ドーリー・ジャクソン

本作では「いじわるグリンチ」が誕生するまでのいきさつが明らかに ©2018 UNIVERSAL STUDIOS

<オスカー俳優が声を担当。「いじわるグリンチ」の知られざる過去と心境の変化を細やかに描く>

あの『グリンチ』がスクリーンに帰ってくる。主人公のグリンチは村中が楽しみにしているクリスマスをぶち壊してやろうとたくらむ筋金入りのへそ曲がり。そんな彼の知られざる一面を観客は知ることになるはずだ。

故ドクター・スースの人気絵本が映像化されるのは、1966年のTVアニメ、2000年の実写版映画(ジム・キャリー主演)に続き、今回で3度目だ。ヤーロウ・チェイニーとスコット・モシャーが監督した本作は、グリンチの物語にこれまでとは全く違う光を当てている。

「映画作りの原点は原書に立ち返り、そこに込められた感情の真理と精神を見つめることだ」と、モシャーは言う。「この映画を作るには最高のタイミングだ。優しさと思いやりが周囲の人々を変えていくというメッセージを伝えたい」

チェイニーはクリスマスをめぐるグリンチの心の中の葛藤について説明し、こう付け加える。「クリスマスは喜びに満ちた素晴らしい時期だが、つらい場合もある。グリンチがまさにそうだ。クリスマスの時期になるとつらい記憶がよみがえる。今回はそこに少し踏み込んでグリンチを癒やそうとしている」

蛍光色のゴージャスな3Dアニメという以外にも、今回の『グリンチ』は過去2作とはひと味違う。それには「主演」ベネディクト・カンバーバッチの存在が大きい。

mag181217grinch-2.jpg

名優カンバーバッチが声で出演 JOHN LAMPARSKI/GETTY IMAGES

アニメ声優の経験も豊富

カンバーバッチはまさにグリンチにぴったりだと、チェイニーとモシャーは準備段階から思っていた。『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』や『ザ・シンプソンズ』などでアニメの声優は経験済み。オスカー俳優の彼なら、グリンチが徐々に変わっていく様子を余さず演じきれるのではないか、とチェイニーが提案した。

「多くの名前が候補に挙がっていたが、彼の名前を見た途端、ほかは目に入らなくなった」と、モシャーは言う。「私たちがこの作品で俳優に求めるユーモア感覚と深みが彼にはある。『SHERLOCK(シャーロック)』などを見れば分かるが、とんでもなく面白くもなれるし、意地悪にもなれる。それでいて当代きっての名優の1人でもある。この作品では深い心境の変化を描きたかった......グリンチの名演技を見ると、やはり彼しかいないと改めて思う」

モシャーとチェイニーは66年のTVアニメを監督した故チャック・ジョーンズに強い影響を受けた。ただし、本作ではグリンチがクリスマスを目の敵にする理由を説明したくて、「グリンチの過去に少し踏み込んで彼の心境の変化を描く」ことにしたと、モシャーは言う。

この作品を見れば、冷たい心もとろけるに違いない。「何より、誰もが楽しめる映画なんだ。子供だけじゃない。みんなもう少し優しくなるべきだ」

GRINCH
『グリンチ』
監督/ヤーロウ・チェイニー、スコット・モシャー
声の出演/ベネディクト・カンバーバッチ
日本公開中

<2018年12月18日号掲載>



※12月18日号は「間違いだらけのAI論」特集。AI信奉者が陥るソロー・パラドックスの罠とは何か。私たちは過大評価と盲信で人工知能の「爆発点」を見失っていないか。「期待」と「現実」の間にミスマッチはないか。来るべきAI格差社会を生き残るための知恵をレポートする。

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中