最新記事

韓国事情

官民あげて日本就職に取り組む韓国の最新事情 

2018年10月30日(火)16時50分
佐々木和義

韓国では就職難がつづく… Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国では、海外で就職する人々が3年で3倍になった。国別では日本が最も多い。日本就職を後押しする官民組織と、人材を求める日本企業の事情とは...>

韓国就職情報サイトのインクルートが分析した韓国産業人力公団の統計によると、2017年に海外就職を希望した求職者2万2997人のうち、実際に就職した人は5118人だった。2014年は1679人で、3年で3倍以上の増加となった。国別で見ると日本が1427人で最も多く、2番目は米国の1079人で、シンガポールの505人などが続いている(聯合ニュース)。

人材を求める日本企業と日本就職を目指す若者たち

韓国貿易協会と韓国コンテンツ振興院が、2018年10月15日、ソウルのCOEX総合展示場でITとコンテンツ分野を中心とする日本企業の採用博覧会を開催した。参加したIT関連企業は13社で、合わせて105人の採用を予定しており、コンテンツ関連の9社も20人を採用する計画だ。同年8月に釜山市庁で日本合同就職博覧会が開催された際には、参加企業50社に対して800人の求職者が集まった。

日本企業が注目を浴びているのは韓国の就職難だけではない。学歴を重視する韓国で名門大学への進学に失敗した人が良い就職先を得ることは難しく、日本の方がより良い企業に就職できるチャンスがある。人生をリセットする機会になると留学生支援ネットワークの久保田事務局長は分析する。実際に大学で肌の美容を専攻した若者が、貿易協会が主催する情報処理教育課程で資格を得て、日本のIT企業に就職した例もある。

韓国企業は採用に際して学歴や資格などのスペックを重視する。ある企業が社員の退職に伴って人材を採用した直後に、より高いスペックを持つ人が応募したため、先に採用した人を試用期間中に解雇して、あとから応募した人を採用した例がある。

一方の日本企業は、新卒者のスペックは重視せず、学閥より長期的な潜在力を見る。国籍などによる差別はなく、新卒の外国人にも終身雇用の機会を与えるなど、日本人と待遇に違いはない。

2017年に日本で就職した韓国人の平均年俸は280万円相当(約2786万ウォン)で、韓国大手企業の大卒初任給の平均3325万ウォンより低いが、中小企業の2523万ウォンを上回る。名門ではない大学を卒業した新卒者は日本の方が良い待遇を得られる可能性が大きいのだ。

韓国人を採用した日本企業の評価も良い方だ。新卒の韓国人は他国の出身者と比べて日本語力が高く、ビジネスマナーもある。また、日本人より進取的で外国語能力に長けている若者が多く、海外営業などに優れているという(中央日報)。

官民あげて日本就職に取り組む

日本就職を後押しするため、韓国貿易協会は光州市の全南(チョンナム)大学などと共同で、情報通信技術と日本語を集中的に教育する「日本IT就職課程」を開設した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中