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神戸の洋菓子チェーン破綻に見る「地方スイーツ」終焉の始まり

2018年10月30日(火)16時45分
阿古 真理(作家・生活史研究家)*東洋経済オンラインからの転載

しかし、次第にスイーツへの注目度は下がり、2008年に起こったリーマンショック以降は、パンブームが盛り上がっていく。それは高級化が進んでいた洋菓子に比べ、パンのほうが安く手軽に楽しめるおやつだったことも大きいと思われる。

洋菓子のライバルも増えた。最近ヒットしたスイーツと言えば、さまざまなトッピングが楽しめる高級かき氷やポップコーン、パフェ、タピオカドリンク、チョコミントスイーツなどがある。少し前にはパンケーキやドーナツのブームもあった。これら近年の人気スイーツは、いずれもいわゆるケーキではない。共通点は、シーンを選ばず食べられるカジュアルさだ。カジュアルさは菓子パンにもある。

「あらたまった」イメージが痛手に?

それに対して洋菓子は、バースデーケーキなどあらたまった席で誰かと一緒に食べるイメージが強い。特に生ケーキは、パティシエの技が詰まった高級感のあるお菓子だけに、きちんと皿に置き、落ち着いた環境で食べるものと思われている。洋菓子のもう1つの柱、焼き菓子も、今後も消費が縮小する可能性が高い。こちらも改まったギフト、というイメージが強いからだ。

誰か新しくカリスマ的なパティシエが登場する、爆発的に人気のケーキが誕生するなどがあれば、洋菓子人気が再燃する可能性がないとはいえない。しかし、出てくるかどうかもわからないスター頼みでは心もとない。

着実に需要を伸ばすには、個人消費を狙い、カジュアルに楽しめるイメージを打ち出す、あるいはその場面に対応できる新ジャンルを開拓する必要があるのではないだろうか。

もう1つの要因は、神戸という地方都市のポジションにある。洋菓子の町、というイメージがある神戸市では、一世帯当たりの消費量は全国トップ。しかし、人口当たりの洋菓子店数も全国トップ。モンブランが事業停止に至ったのは、厳しい競争に敗れからだ。

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