最新記事

日本経済

神戸の洋菓子チェーン破綻に見る「地方スイーツ」終焉の始まり

2018年10月30日(火)16時45分
阿古 真理(作家・生活史研究家)*東洋経済オンラインからの転載

ライフスタイルの変化は「洋菓子チェーン店」に厳しい選択を突きつけている

「地方スイーツ」終焉の始まりなのか。「至高のモンブラン」「お・も・て・な・し半熟チーズ」などの人気商品で知られる神戸の老舗洋菓子チェーンを展開するモンブランが10月22日、事業停止し、自己破産の申請準備に入ったことがわかった。帝国データバンクによると、負債額は約3億2800万円に上る。

現在、17店を経営するモンブランは、1963年に兵庫県加古川市で創業。2000年代に入って多店舗展開を加速させ、2017年以降も神戸市内に3店も出店していた。帝国データバンクによると、競争激化が加速し、原材料費が高騰する中、積極出店したコストを吸収しきれなかったようだ。経営判断の誤りと言えるが、背景にある問題はモンブラン1社だけのものではないと考えられる。

国内スイーツ市場は縮小傾向

富士経済の予測によると、国内スイーツ市場は近年縮小傾向にあり、今後もマイナスが続く見込みだ。コンビニ、量販店は拡大するが、チェーン店や個人経営店は縮小していくという。その1つがモンブランだったというわけだ。

モンブラン事業停止の背景には、スイーツシーンの変化と地方都市としての神戸の位置づけ、2つの要因があると考えられる。

1つは、スイーツシーンの変化だ。昔はお菓子と言えばケーキか和菓子で、ケーキは贈答品、家族での祝いごとに欠かせないものだった。家族ぐるみの付き合いが多く、家庭を訪問する際の手土産や中元・歳暮などに洋菓子は使われていた。しかし、人々のライフスタイルが多様化したことにより、家庭訪問も、中元・歳暮のやり取りも減ってしまった。

2000年前後にスイーツブームが盛り上がったことで、洋菓子の人気はいったん上昇。当時は、『料理の鉄人』のヒットでシェフに注目が集まっており、1999年に鉄人に挑戦して勝った辻口博啓氏がカリスマ的な人気を誇った。同時期に起こったデパ地下ブームも、スイーツブームを盛り上げる要因となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中