最新記事

日本経済

神戸の洋菓子チェーン破綻に見る「地方スイーツ」終焉の始まり

2018年10月30日(火)16時45分
阿古 真理(作家・生活史研究家)*東洋経済オンラインからの転載

神戸が洋菓子の町になったのは、幕末の開国で貿易港となったことが背景にある。江戸時代の寒村は、日本第三の経済規模まで上り詰め、昭和後期には、洋菓子やファッションの町など、独自のブランド力で知られるようになっていく。小さいが特徴がある地方都市として、人気を博していったのである。

洋菓子の町として発展するきっかけは、1923(大正12)年に起こった関東大震災である。先に開港し、東京に近いことから洋風文化の拠点だった横浜から、大勢の外国人が神戸に移った。

阪神淡路大震災で「潮目」が変わった

ユーハイムを開いたドイツ人、カール・ユーハイムも1922年に横浜で開業したが、関東大震災のため神戸に拠点を移している。神戸は1897(明治30)年に開業した神戸風月堂が洋菓子の町としての基礎を築いており、そこへユーハイム、亡命ロシア人が1931(昭和6)年に開いたモロゾフなど、町の人に愛される洋菓子店が増えていった。

1980年代、『JJ』などのファッション誌が盛んに神戸を取り上げ、洋菓子も若い女性を中心に注目を集めるようになる。海外旅行が身近になる直前、西洋文化の入り口としての神戸は、高く評価されていたのである。

時代が大きく変わったきっかけは、1995(平成7)年に起きた阪神淡路大震災だ。神戸の中心部が地震で破壊され、稼働を停止せざるをえなかった企業や店は多かった。神戸で1924年に創業したパン屋で、洋菓子も人気のフロインドリーブは、震災で店が立ち入り禁止となり、工場もライフラインが止まって、半年間営業できなかった。

平成不況はその後深刻さを増す。関西からは多くの有名企業が、本社機能を東京に移す動きが続いた。洋菓子も東京に進出する店が増えた。デパ地下にも出店する芦屋のアンリ・シャルパンティエが、銀座に店を構えたのは2003年である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ相場が安定し経済に悪影響与えないよう望む=E

ビジネス

米製薬メルク、肺疾患治療薬の英ベローナを買収 10

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中