最新記事

中国

ポスト「キッシンジャー秩序」を狙った習近平の対外戦略

2018年10月19日(金)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そこで習近平は第19回党大会以降、新たな対外誘導戦略を指示した。

中央外事工作領導小組を「中央外事工作委員会」に格上げ

今年2月26日から28日まで開催された第19回党大会三中全会(第三回中共中央委員会)で審議され、3月に発布された「党と国家機構改革を深める方案」(以後、方案)により、従来の「中央外事工作領導小組」を「中央外事工作委員会」(以下、委員会)に格上げした。

この方案は10月11日付のコラム「芸能界に続いてインターポール、中国でいま何が起きているのか」に書いた方案と同じである。

外事に関しては、それまであった「中央維護(保護)海洋権益工作領導小組」も撤廃して全て委員会に組み込み、委員会で「統一的に計画し」、「部署を統一する」と方案は決定している。

委員会の性格を考察するために、その構成メンバーをご紹介しよう。

 主任:習近平(国家主席、中共中央総書記、中央軍事委員会主席)

 副主任:李克強(国務院総理)

 委員: 王岐山(国家副主席)、楊潔チ(中共中央政治局委員)、王毅(国務委員兼外交部部長)、宋濤(中共中央対外聯絡部部長)、黄坤(こん)明(中共中央政治局委員、中共中央宣伝部部長)、魏鳳和(中央軍事委員会委員、国務委員兼国防部部長)趙克志(国務委員兼公安部部長)、陳文清(国家安全部部長)、鐘山(商務部部長)、劉結一(国務院台湾弁公室主任)、張暁明(国務院香港澳門事務弁公室主任)、徐麟(中共中央対外宣伝弁公室主任兼国務院新聞弁公室主任)、許又声(国務院僑務弁公室主任)

 中央外事工作委員会弁公室主任:楊潔チ(兼務)

 中央外事工作委員会弁公室副主任:楽玉成(外交部常務副部長)

習近平は、このような多方面からアメリカや日本を含めた諸外国を取り込もうとしているが、日米に関して言うならば、いまアメリカの対中強硬姿勢は著しいので、外事工作の標的を「日本」に絞っている。それも毛沢東に倣(なら)って、「特定の個人」を取り込むという基本路線を外していない。

日本の自公幹部と日本経済界代表を「一帯一路」に誘導せよ

習近平政権は各国の政権与党幹部にターゲットを絞っているが、その現象はまず第19回党大会後の昨年11月末に開催された「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」に現れている。主宰したのは中共中央対外聯絡部だ。委員会メンバーを公表したときの順番も「○○部」レベルでは「対外聯絡部」が先に来ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中