最新記事

海洋汚染,特集プラスチック危機

9割の食塩にプラスチック片、成人1人当たり年間2000個が体内に

2018年10月23日(火)16時20分
松丸さとみ

9割の食塩にマイクロプラスチックが… Amarita-iStock

<世界21カ国で取れた塩を使い、食卓塩として販売されている39銘柄を調査したところ、その90%からマイクロプラスチックが検出された>

39銘柄中プラスチック片ゼロはわずか3銘柄

海のプラスチック汚染が叫ばれてから久しい。米国化学会発行の業界誌ケミカル&エンジニアリング・ニュース(C&EN)によると、年間800万トンのプラスチック・ゴミが海に流れ出ている。そんな中、プラスチック汚染に関してショックなデータがまた1つ明らかになった。このほど行われた調査で、私たち人間も、海に流れ着いたマイクロプラスチックを年間2000個も口にしているというのだ。

世界21カ国で取れた塩を使い、食卓塩として販売されている39銘柄を調査したところ、その90%からマイクロプラスチックが検出されたという。これは、成人1人当たり年間2000個のマイクロプラスチック片を食べているのに相当する。マイクロプラスチックが発見されなかったのはわずか3銘柄だった。

マイクロプラスチックとは、粉々になって大きさが5ミリ以下になったものを指す。

アジア産の食塩に目立つ

米ウェブメディア、クオーツによると、調査は韓国の国立大学、仁川大学校が国際環境NGOのグリーンピース・東アジアと共同で行なったもの。結果は10月16日、エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジーに発表された。

調査に使用された食塩は、オーストラリア、ベラルーシ、ブルガリア、中国、クロアチア、フランス、ドイツ、ハンガリー、インド、インドネシア、イタリア、韓国、パキスタン、フィリピン、セネガル、台湾、タイ、英国、米国、ベトナムの21カ国で取れたもの。39の銘柄のうち、28銘柄は海塩、9銘柄は岩塩、2銘柄は湖塩だった。前述の、「マイクロプラスチックが検出されなかった3銘柄」は、台湾産の精製海塩、中国産の精製岩塩、そしてフランス産の未精製の海塩だった。

サンプルの中で最も多くのマイクロプラスチックが検出されたのは、アジア諸国産の塩だった。マイクロプラスチックの含有量が多かった上位10銘柄のうち9銘柄がアジア産だったのだ。クオーツは、含有量の多さは、最も多くのプラスチックが海に流れ出ているポイントと関係があると指摘している。

前述のC&ENによると、海のプラスチック・ゴミの出どころは、世界中でアジアとりわけ東南アジア諸国が最も多い。

(参考記事)世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる

クオーツによると今回の調査を行なったチームは、この調査結果により、プラスチック汚染が世界で最も深刻な場所はアジアであることが改めて示されたのみならず、海塩が、海洋環境のマイクロプラスチック汚染の度合いを知る指標になり得ることも示していると述べている。

しかし当然ながら、食塩から取り込むマイクロプラスチックは、人間が体に取り込んでいる全体量のほんの一部に過ぎない。体内に入る全体量は年間で成人1人当たり3万2000片に上ると見られており、食塩からの2000片はこのうちわずか6%程度だ。クオーツによると、80%は呼吸から体内に取り込まれている。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次

ワールド

トランプ大統領、ベネズエラとの戦争否定せず NBC

ワールド

プーチン氏、凍結資産巡りEU批判 「主要産油国の外
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中