最新記事

災害

インドネシア政府、スラウェシ地震・津波の捜索11日で終了へ 怒りと落胆の被災者

2018年10月9日(火)12時25分
大塚智彦(PanAsiaNews)

瓦礫となった被災地で行方不明者の捜索は続いているが Athit Perawongmetha - REUTERS

<地震と津波の発生から10日が過ぎたインドネシア。被災地の実情を無視した杓子定規な政府の対応に批判が高まっている>

9月28日にインドネシア・スラウェシ島の中スラウェシ州で発生したマグニチュード7.4の地震とそれに伴う津波被害。行方不明となっている住民や倒壊した建物の瓦礫の下敷きになっている遺体の収容作業は依然として続いている。そんななか、インドネシア政府国家災害対策庁(BNPB)は10月7日、捜索救助活動を11日で終了する意向を明らかにし、行方が分からない家族を探している現地の被災者などからは怒りと落胆の声が上がる事態となっている。

BNPBや現地で捜索活動を続けるインドネシア国軍などによると、10月8日までの犠牲者は1944人に達し、重傷者は2549人、行方不明者は683人でこのうち152人は瓦礫の下敷きになっているとみられている。

日本の航空自衛隊C130輸送機によるカリマンタン島バリクパパン空港からのピストン輸送によるテント、浄水器、発電機などの救援物資の搬入などが6日から本格化した。一方、被害が大きかった州都パルやドンガラなどの地区では依然として行方不明者の捜索が国軍兵士、警察官、国家捜索救助庁(BASARNAS)、民間ボランティア団体、フランスからの救助隊などによって続けられている。

緊急対応は発生後2週間の規定

しかしBNPBは「行方不明者捜索及び遺体の回収作業は11日を以って終了とする」と発表した。BNPBではインドネシア災害関連規定では災害時の緊急対策期間が「発生から2週間をめどとする」と決められていることを根拠に「11日で2週間となる」として捜索・回収作業の中止を決めたとしている。

またBNPBでは地震による液状化現象で地盤沈下が激しい地区などに関しては「今後も瓦礫の撤去作業は続ける」としたうえで「瓦礫撤去後はもはや住居地区としては不適切なため整備して公園やスポーツ施設を建設したい」との意向を明らかにした。

こうしたBNPBによる杓子定規な捜索中止決定や被災地の跡地利用に早くも言及するような姿勢に対しては「家族が未だに見つからないのに中止は許されない」「家族親族だけでも捜索は続ける」「イスラム教徒は個人の亡骸をきちんと埋葬しないわけにはいかない」などの被災者からの怒りと落胆の声が地元紙を賑わせる事態となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国のウクライナ和平案、ロシア文書を基に策定=関係

ビジネス

日経平均は続伸、米早期利下げの思惑が支援 ハイテク

ワールド

高市首相、放漫財政を否定 為替は「状況見て必要な手

ワールド

マクロスコープ:米中接近で揺れる高市外交、「こんな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中