最新記事

サイエンス

「腸内細菌には電流を生成する能力がある」との研究結果

2018年9月26日(水)17時55分
松岡由希子

腸内細菌は電流を生成する力があるかもしれない adventtr-iStock

<スウェーデンのルンド大学の研究プロジェクトは、腸内細菌が電気を生成する過程を明らかにした>

私たちの腸内に生息する細菌には、電流を生成する力があるかもしれない----。スウェーデンのルンド大学の研究プロジェクトは、腸内細菌が電気を生成する過程を明らかにし、その研究成果を生化学分野の学術誌「バイオケミストリー」で発表した。

ヒトの消化管に常在する乳酸菌の一種で調べた

細菌が細胞外の物質に電子を伝達して呼吸する「細胞外電子伝達(EET)」において、細菌が組織外で電流を生成しうることはこれまでにも知られている。そこで、研究プロジェクトでは、ヒトや動物の消化管に常在し、尿路感染症や髄膜炎などの起炎菌でもある乳酸菌「エンテロコッカス・フェカリス」を対象に、細胞外電子伝達(EET)について詳しく調べた。

研究プロジェクトが特に注目したのは、細菌から組織外の電極へ電子を移動させるうえで、どのようなものが必要なのかという点だ。

実験結果では、グラファイト電極に直接固定化された細菌が、代謝プロセスにおいてブドウ糖に応答し、微小ながら検出可能な電流を示した。電子は細胞内の糖を分解する際に放出され、電極への移動には、細胞膜内のキノン分子と呼ばれる有機化合物からの助けを受けていることもわかった。

微生物燃料電池やバイオセンサーの研究開発へ

また、一連の研究結果は、自然界の細菌が互いに不足するものを補い合うことも示している。2種類以上の異なる細菌が互いの代謝能力を絡み合わせ、他方もしくは両方の成長に役立てるというわけだ。

また、このように相補的な栄養成分を補い合って生活する「栄養共生」に細菌間の電子移動が関連している可能性もあることも明らかとなった。

研究論文の筆頭著者であるルンド大学のラース・ヘダーステッド教授は、「栄養共生は、細胞自身が持っていない代謝能力をもたらす。たとえば、個々には分解できない化合物が、異なる細菌が一緒になることで効果的に分解できるようになる」と述べている。

これらの研究成果は、ヒトの消化器系のメカニズムの解明に役立つだけでなく、微生物燃料電池やバイオセンサーなどの研究開発にも応用できると期待が寄せられている。

カリフォルニア大学バークレー校の研究でも電流を生成する腸内細菌が発見された

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

フランス、米の圧力でG7サミットから南ア除外との見

ワールド

カナダ外相、G7諸国に新たな防衛銀行への参加働きか

ワールド

中国SMIC、イラン軍に半導体製造技術を提供=米政

ワールド

北朝鮮とベラルーシが友好条約に調印、平壌で首脳会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 5
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中