一方、ソメイヨシノと王桜が異なる種であることは、韓国起源説と関係なく行われてきた数多くの研究で古くから科学的に判明しており、それが韓国を除く世界の常識となっている。

2011年には、韓国人学者自身が、アメリカ農務省のサイトに今回と同じように王桜とソメイヨシノは別種であるという分析結果を発表したこともある。ただし、この説は3年後に当のチョン・ウンジュ博士によって撤回されている。韓国公共放送KBSの取材に対し、同博士は当該の論文は「誤りだった」と述べ、ソメイヨシノの起源は王桜だという論文をあらためて発表することを約束したという。

自説撤回が学者としての良心から来るものなのか、韓国世論の圧力に屈した結果なのかは分からないが、公共放送のインタビューという場で主張を180度変えたのは極めて不自然に映る。また、韓国文化庁という国の機関が韓国起源説を正式に採用していることからも、ソメイヨシノの起源については、「事実」を語ることが、韓国ではタブーとなってきたことが伺える。

そのため、今回報じられた韓国・明知大学と嘉泉大学の合同研究チームによる解析結果は、それ自体はそれほど目新しいものではないが、大手メディアの中央日報が「今回の研究結果で論争自体が無意味になった」と客観的事実と 「敗北」を潔く認めているのは、極めて異例な論調だと言えよう。

「自己欺瞞はもう終わった」

そもそも、なぜ、韓国世論はこれほどまでにソメイヨシノの起源にこだわるのか? 当該報道の2日後、中央日報英字版『コリア中央デイリー』のムン・ソヨン文化局長が寄せたコラムにヒントを見つけた。「この学説は、韓国人が桜を楽しみながら『日帝の残滓ではないだろうか』という民族主義的罪責感を都合よく軽減してくれた。桜祭りが韓国の代表的な春の祭りになり、関連商品が数えきれないほど登場した中、論争が起こるたびに民族主義的な防壁として出てくるのが『済州原産地説』だった」と同氏は書く。

ムン氏は続ける。「しかしその防御論理はおかしかった。花の原産地とその花を楽しむ文化の発生地は別のものだからだ。たとえ世界の桜の起源が済州だとしても、私たちの祖先が桜を楽しんだ例は過去の詩や絵には見られない。(中略)すなわち、原産地がどこであれ、今日の韓国で桜を楽しむ風習は私たちの伝統でなく、日帝強占期を経て日本から入ってきたということだ」。同氏はそのうえで、「 「ソメイヨシノ済州原産地説」を主張して私たちの伝統でない桜祭りをいかがわしい民族主義で包装する自己欺まんはもう終わった」と言い切っている。

韓国起源説のターゲットは日本?