テスラに新たな経営上の懸念 太陽光発電タイル、生産トラブルで広がる波紋
8月8日、米テスラが開発した住宅の屋根用タイルと太陽光パネルが一体化した「ソーラールーフ」の生産が、軌道に乗っていない。ニューヨーク州のテスラのバッファロー工場で2日撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)
米テスラが開発した住宅の屋根用タイルと太陽光パネルが一体化した「ソーラールーフ」の生産が、軌道に乗っていない。ニューヨーク州バッファローの工場における組み立てラインが抱える問題や、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が要求する「洗練されたデザイン」のハードルの高さが原因だ。テスラや同事業の提携先となっているパナソニック<6752.T>の社員および元社員8人がロイターに明らかにした。
パナソニックのある社員やテスラの元社員の話では、昨年開設されたバッファロー工場の生産が度々停滞するため、パナソニックは同工場内で製造してテスラに売るはずだったセル(単電池)やパネル(モジュール)の新たな買い手を模索せざるを得なくなっている。また工場に7億5000万ドルの補助金を提供したニューヨーク州の関係者からは、テスラが約束通りの雇用や投資を行うか疑念の声も聞かれる。
こうした生産トラブルは、テスラの太陽光発電事業自体の将来性にも一段と影を落とす。2016年にソーラーシティーを26億ドルで買収して太陽光発電に参入したテスラは、本業の電気自動車(EV)の増産に注力している半面、太陽光発電事業は縮小の一途をたどっているのだ。
ソーラールーフは、普通の屋根用タイルの外観を呈しながら発電機能を持つのが特徴だが、2つの要素を両立させるのがいかに難しいかが証明されつつある。
別の元テスラ社員は「見た目の美しさが重要なポイントでマスク氏は常に満足していない。それが大きな問題だ」と話した。価格面でも1ワット当たり6ドル近くと、全米平均のおよそ2倍に上る。
テスラはロイター向けの声明で、ソーラールーフの生産プロセスの改善を目指していると認めた。ただ現在の詳しい生産状況は明らかにせず、パナソニックからのセル購入に関してもコメントしていない。
一方パナソニックは、バッファローで製造した一部パネルをテスラに売る代わりに自社ブランドとして出荷している。セルについても、有望な買い手候補に対して見本として大規模に提供しているという。
パナソニックはほかの顧客へのセルサンプルの出荷についてコメントを控えた。その上で「ソーラールーフが本格販売される際には、当社製セルが使用されると認識している」と付け加えた。