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カリフォルニア史上最大の山火事にトランプがトンデモ発言

Trump's California Wildfires Tweets Baffle Experts

2018年8月8日(水)16時11分
ジェイソン・ルミエール

カリフォルニアのメンドシノ火災。道路に迫る火の横を走り抜ける消防トラック(7月31日) Fred Greaves-REUTERS 

<あちこちで燃え盛る山火事の1つは、ついに焼失面積でカリフォルニア史上最大に。今ごろ山火事に初めて触れたトランプは、環境保護政策の責任と>

ドナルド・トランプ大統領は数日前から新たなツイッターネタにご執心だ。それは、カリフォルニア州の山火事の原因と解決策に関するもの。その提案に、専門家は一様に困惑している。

カリフォルニア州では、数週間にわたって山火事が猛威を振るっている。サンフランシスコ北のメンドシノ郡で発生した山火事は、2つの山火事が合流したことから「メンドシノ複合火災」と呼ばれ、8月6日には焼失面積でカリフォルニア州史上最大の規模に達した。トランプはその前日、7月からカリフォルニアのあちこちで続いている山火事に初めて触れ、犠牲者に弔意を述べることもないまま持論を展開した。

トランプのツイートはこうだ。「(カリフォルニア州の)ジェリー・ブラウン知事は、北から流れてきて愚かにも太平洋に流れこんでいる自然の水を利用できるようにするべきだ。火災でも、農業でも、何でも使える。水が豊富なカリフォルニアを想像してみてほしい。素晴らしいじゃないか!」

翌日にはこう投稿した。「(山火事は)実態以上に大きく悲惨に伝えられている。ひどい環境法が、いますぐ使える大量の水を使えなくしているからだ」


トランプによるこのあやしげな主張は、唐突に見えるが、2016年の大統領選の間にも触れられていた。トランプは当時、カリフォルニアには干ばつはないし、10センチ足らずの「小魚」を保護するために水の流れを変え、「海に」捨てていると主張した。この主張の誤りは、当時も徹底的に暴かれたのだが、まだ信じていたようだ。

加州当局も「水は十分にある」と

トランプがどこからそんな偽情報を仕入れたのかは不明だが、それは共和党のデビン・ニューネス下院議員(カリフォルニア州選出)の長年の主張に沿うものだ。過去には、FOXニュースの保守派司会者ショーン・ハニティーも同様の発言をしている。2人とも熱心なトランプ支持者であり、ロシア疑惑でもトランプを擁護している。

だが、環境と水の専門家は、トランプの主張にはほとんど根拠がないと言う。

非営利組織(NPO)「パシフィック・インスティチュート」の代表で、世界的に著名な気候と水の専門家であるピーター・グレイクは、「ポリティコ」の記事のなかでこう述べた。「トランプは、水と火災、カリフォルニア州の環境政策、そして気候変動に関して、大きな誤解をしている」。グレイクはさらに 「州の水政策が、どういうわけか消火用の水の不足につながっているなどという話は、ばからしすぎて反論する気もしない」

またカリフォルニア大学デービス校の土木・環境工学教授、ジェイ・ランドは、AP通信に対し「(トランプの主張は)物理的にまったく不可能だ」と話した。

もっと水を提供しようとツイートしたトランプに対し、カリフォルニア州森林保護防火局の広報担当者スコット・マクリーンは「水は十分にある」と言った(AP)。

(翻訳:ガリレオ)

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