最新記事

ISIS

ISISの「奴隷」にされた少女が、避難先のドイツで元戦闘員と悪夢の再会

Ex-ISIS Slave Says Captor Found Her in Germany, Flees

2018年8月17日(金)16時20分
トム・オコナー

ISISは数千人の少女、女性を拉致して日常的に虐待した(写真はイラク北部の故郷を追われて避難するヤジディ教徒の人々、14年8月) Rodi Said-REUTERS

<ドイツの警察はヤジディ教徒の少女を虐待したISIS元戦闘員を、「同じ難民だから」という理由で野放しにしていた>

テロ組織ISIS(自称イスラム国)に拉致されて奴隷のように扱われた後、脱出したクルド人ヤジディ教徒の10代の少女が、ISISの元戦闘員の男に避難先のドイツで居場所を知られ、イラクに戻らざるを得なくなっていたことがわかった。

4年前の2014年8月、ISISはイラク北部に進撃し、数千人ものクルド人やヤジディ教徒を拉致した。家族とともに拉致された当時15歳の少女、アシュワク・タロは、アブ・フマムという名前のシリア人の男にドイツで再会したことを明らかにした。その男は多数の若い女性や少女をISISから買い取り、イラク北部モスル近郊に監禁。約10か月にわたり日常的に虐待し、イスラム教に改宗するよう強要していた。

2015年6月、周到に計画して何とか脱出を果たした後、難民となった彼女は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を緩和する人道支援プログラムを受けながら、ドイツ南部シュツットガルトで生活を始めた。2016年頃、彼女は何者かに尾行されている気がしたが、その時は何も起きなかった。そして今年2月、自宅がある難民キャンプに向かって歩く途中、男が目の前に現れたと言う。

悪夢の再会

「呼び止められたのは、今年の2月21日のことだった。恐る恐る男の顔を見て、体が凍りついた。監禁中と同じように不気味な髭と醜い顔をした、アブ・フマムだった。ドイツ語で『お前はアシュワクだな?』と問われたときには、言葉が出なかった」とタロは8月15日、クルド系メディア「バスニュース」の独占インタビューで語った。

タロは自分だけでなく、家族の身に危険が及ぶのを恐れた。脱出後、家族のメンバーの多くと再会したが、いまだに5人の兄弟の行方が分かっておらず、姉1人はISISに拉致されたままかもしれないと言う。

脱出する際、タロと仲間の少女たちは男の携帯電話を使って兄弟に助けを求めた。連絡を受けた兄弟は、タロたちにわざとひっかき傷を作らせ、皮膚の病気だと言って男を騙す作戦を実行させた。少女たちは連れて行かれた病院で睡眠薬を受け取り、帰宅後、男の食べ物に混入させて、男が眠った隙を突いて脱出した。

ドイツで男に呼び止められた時、タロは人違いだと答えた。だが男は執拗に問い詰めた。「いや、お前はアシュワクだ。俺のことをよく知っている。アブ・フマムだ。モスルでしばらく一緒だったな。お前が今どこで誰と暮らし、何をしているか知っているぞ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中