<対中制裁強化のためEUと手を打ったトランプ、おかげで欧州勢は対米輸出で中国を出し抜ける>

一時は本格的な貿易戦争に突入しかねなかったアメリカとEU。しかし今、前線は静まり返っている。

欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長が7月末にドナルド・トランプ米大統領と会談し、合意に達したからだ。両者の合意は世界を驚かせたが、よく考えれば当然の帰結だった。

合意の核心は「自動車を除く製品の関税ゼロ、非関税障壁ゼロ、補助金ゼロに向けて協力すること」。米欧間の交渉が進む間は新たな貿易障壁を設けないことになった。つまり自動車関税も棚上げされたわけだ。

注目すべきは、米欧が自由貿易協定の取りまとめに向けて交渉を行うことではない。トランプがEUの鉄鋼・アルミ製品に輸入関税を課したことから始まった「目には目を」の報復合戦のエスカレートを、トランプ・ユンケル合意が止めたことだ。

アメリカの大統領は、自国の安全保障が脅かされる可能性があれば、関税などの貿易障壁を一方的に設ける権限を持つ。だからトランプは議会の意向などお構いなしに独断で貿易戦争の火ぶたを切った。しかし貿易協定を結ぶには議会の承認が必要だ。協定には国内の多種多様な産業の利害が絡むため、工業製品に限定した取り決めであっても、そう簡単に話がまとまることはあり得ない。

貿易が国家経済に大きな位置を占めていれば、自由貿易協定は世論の支持を得やすい。その経済的な恩恵が、国内産業に与える打撃を上回るからだ。

しかしアメリカ経済における貿易の比重はそれほど大きくない。トランプは「メイド・イン・USA」をせっせと他国に売り込んでいるが、GDPに占める輸出の割合は10%足らず。輸出産業の直接的な雇用がアメリカの雇用全体に占める割合も微々たるものだ。

これとは対照的に、EU加盟国の大半では輸出がGDPのかなりの割合を占め、ドイツでは40%近くに上る。経済が貿易頼みであれば、貿易自由化のメリットは国民にも理解されやすい。だからこそEUは長年、米欧自由貿易協定の締結に意欲を燃やしてきた。

報道によれば、ユンケルは自動車関税を回避するため、トランプに「大幅な譲歩」をして、アメリカ産大豆を大量に買うことになったという。だが実は、大豆の輸入拡大でEUはちっとも損をしていない。中国がアメリカへの報復措置として追加関税をかけたため、アメリカ産大豆は中国市場から締め出されて価格が下落。EUは安くなった大豆を大量に買い付けただけだ。

中国に白旗を上げさせるため