最新記事

異常気象

週末、ヨーロッパにまた熱波。最高気温は48度を突破も

Record Temperatures in Forecast for Spain and Portugal

2018年8月3日(金)15時00分
ジェイカブ・ルワンドウスキ

マドリッドの路上では異常な暑さに犬も水浴び Susana Vera-REUTERS

<アフリカから熱波が近づくヨーロッパでは、スペイン、ポルトガルを筆頭に過去最高を超える高温に見舞われるおそれがある>

ヨーロッパにまた熱波が近付いている。週末にかけて、気温は過去最高の48度を突破するかもしれない。

最高気温の48度は1977年、ギリシャのアテネで観測された。しかしこの夏は、アフリカから熱波が迫るスペインやポルトガルでとくに気温が上昇している。英BBCによると、ヨーロッパ各国で最高気温が更新される可能性がある。

スペイン気象局は高温警報を出している。スペインの最高気温は昨年7月の47.3度で、西隣のポルトガルでは2003年に47.4度の記録がある。

今年は、ヨーロッパ全域が猛暑で破壊的な影響を受けている。

スウェーデン北部のケブネカイセ山では、国内最高峰の南側山頂部を覆っていた氷河が溶けて標高が約4メートル低くなり、最高峰の栄冠も失われた。

(溶けてしまったケブネカイセ山の高さを測る研究者)


「世界の氷河を代表するような氷河だったが、まず雪が、そしてその下の氷河全体が溶け出して、周辺の植物、動物、気候など生態系全体に影響が出ている」と、ストックホルム大学のグンヒルト・ニニス・ロスクビスト教授(地理学)は指摘する。

動物はトンネルに避難

ノルウェーの公共道路管理局はドライバーに、熱波から逃れてトンネルの中に逃げ込んでいる野生動物に注意するよう呼び掛けている。

「野生動物、特にトナカイやヒツジが涼しくて日差しを避けられるトンネルに逃げ込んでいる」と、管理局の担当者トーレ・ライスベルグは言う。

(フィンランド北部のロバニエミ。気温32度で人もトナカイも沐浴)


ギリシャでは先月、海岸のリゾート地で森林火災が発生して91人が死亡。火災で家族を奪われた人たちが、ギリシャ当局の管理責任を問う訴訟を起こした。

「防火対策、消火活動、住民の安全に責任を負う者は全て、名前を挙げて有罪とされるべきだ。関係自治体の首長、警察、消防が対象となる」と、原告側弁護士のアントニオ・フォウッサスは言う。

(ギリシャの山火事から逃れて生き延びた人々)


また、熱波によってヨーロッパ全域の農家が干ばつの被害を受け、そのうち多くの農家が各国政府や欧州連合(EU)からの資金援助を求めている。

ドイツ農業協会のヨアヒム・ルクビートは、今年の収穫量は昨年より20%減少すると予測する。「莫大な損害が見込まれる」

それは今週末、さらに膨らむ恐れもある。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中