最新記事

金融

全面貿易戦争「回避」なるか? 資産運用ファンドは終息を想定

2018年7月28日(土)10時00分

7月26日、資産運用会社は、関税引き上げをちらつかせるトランプ米大統領の通商交渉が全面的な貿易戦争の勃発にまで至ることはないとみており、オプションを使ったヘッジにもほとんど動いていない。写真はイリノイで演説するトランプ大統領(2018年 ロイター/Joshua Roberts)

資産運用会社は、関税引き上げをちらつかせるトランプ米大統領の通商交渉が全面的な貿易戦争の勃発にまで至ることはないとみており、オプションを使ったヘッジにもほとんど動いていない。

米国と欧州連合(EU)は25日、交渉を進める間は自動車への関税を棚上げすることで合意した半面、トランプ氏は中国に対する強硬な姿勢は維持。国際通貨基金(IMF)は、米国が年間5000億ドルに上る中国からの全輸入に制裁関税を課せば2020年までに世界の成長を0.5%ポイント押し下げると試算している。

しかし大半の資産運用会社は、貿易紛争はいずれ終息に向かうと見込んでいる。

リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのマルチアセットファンド責任者ジョン・ロー氏は「貿易戦争について検討すればするほど、根本的で不可避な変化は起きない方のリスクがどんどん高まっていることが分かる」と述べた。

下半期については、むしろ米国の物価上振れの心配がより大きいという。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの今月の調査によると、通商紛争は市場にとって2012年のユーロ圏債務危機以来最大のリスクと受け止められている。だが貿易戦争に備える動きは広がっていない。

これはトランプ氏の「口撃」があくまでも11月の中間選挙をにらんだ行動であることが一因だ。

また、米国と中国の間でこれまでに発動された制裁関税は500億ドル相当弱と両国の経済規模の合計32兆ドルに比べれば微々たるものにすぎず、世界経済も力強い成長を維持している。

さらに通商紛争に絡んだ株式の売りは比較的小さく、米国とEUの合意前の時点でも世界の株価の過去最高値からの下落率は4%弱にとどまっていた。

パインブリッジ・インベストメンツのクレジット・ポートフォリオマネジャー、ロベルト・コロナド氏は「トランプ氏の発言を100%真に受ける人はいない。トランプ氏はころころと考えを変えるし、中国は平静を保っている」と指摘。通商紛争を理由にすべて売り払うという考えに合理性はないとの見方を示した。

オプション市場の動きからは、米国が9月初旬に中国からの輸入2000億ドル相当に制裁関税を課しても市場のボラティリティーが高まることはないと見込んでいることが読み取れる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

植田総裁、21日から米国出張 ジャクソンホール会議

ビジネス

中国のPEセカンダリー取引、好調続く見通し 上期は

ワールド

マスク氏が第3政党計画にブレーキと報道、当人は否定

ワールド

訪日外国人、4.4%増の340万人 7月として過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中