最新記事

中国軍事

中国人民解放軍は「平和ボケ」だ

2018年7月4日(水)17時00分
ジェイソン・レモン

実戦はベトナム戦争以来ご無沙汰の人民解放軍(2015年9月) cnsphoto-REUTERS

<長く戦争をしていない中国の人民解放軍は、規模は大きいが「戦争を知らない」軍隊。即戦力としての訓練が急務、と軍機関紙が警告>

中国の人民解放軍は、ここ数十年戦争がなかったせいで「平和ボケ」にかかっていると、軍の機関紙が批判した。

この「平和ボケ」を撲滅すべく、人民解放軍は、即戦力としての訓練を強化している。習近平国家主席も自国の軍に対し、実戦に必要な技能を兵士に身につけさせるよう命じたと、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストが報じた。習は、数に頼る代わりに部隊の訓練に重きを置く改革をした。

サウスチャイナ・モーニングポストの記事によると、人民解放軍の機関紙、解放軍報は社説で、「わが軍では数十年にわたって平和ボケがはびこってきた」と指摘。「このような悪しき病を退治すべく固い決意で臨まなければ、実際に戦争が起きた際に必ずや高い代償を払わされるだろう」と、危機感をあらわにしているという。

人民解放軍は、現在軍役に就いている兵士だけでも210万人を数え、人数では世界最大規模を誇る。だが1970年代のベトナム戦争を最後に、実戦を経験していない。その結果、軍が慢心し能力が落ちているのではないかと、軍幹部や習近平は危惧している。そこで習は、今後30年以内に自国の軍を世界クラスの戦闘部隊へと変貌させるという目標を掲げた。

「戦争を止められるのは、我々に戦闘能力があってこそだ」と、解放軍報は論じている。「軍は今こそ正しい道に戻り、戦闘訓練に集中しなくてはならない」

前例のない危機

サウスチャイナ・モーニングポストによると、人民解放軍の元将校、ユエ・ガンは、中国軍にはびこる大きな問題として、責任逃れと汚職を指摘する。「『平和ボケ』の主症状は、汚職と職務怠慢だ」

解放軍報はまた、中国が直面する安全保障上の脅威は増しており、世界的な懸念材料も前例がないほどだと指摘。中国は現在、領有権を争う南シナ海で示威行為を繰り返しており、アジアの近隣諸国との間で緊張が高まっている。またアフリカのジブチに海外初の軍事基地を設けるなど、海外進出も積極化させている。

貿易摩擦でアメリカとも緊張が増す中、中国はロシアとの関係改善にも熱心だ。7月3日(現地時間)には、国務委員で国防部部長を務める魏鳳和が、中国を訪れていたロシア地上軍総司令官、オレグ・サリュコフと北京で会談した。魏はサリュコフに対し、両国が「脅威や課題に共同で取り組んでいく」意向を伝えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民と維新、連立政権樹立で正式合意 あす「高市首相

ワールド

プーチン氏のハンガリー訪問、好ましくない=EU外相

ビジネス

訂正-アングル:総強気の日本株、個人もトレンドフォ

ビジネス

アングル:グローバル企業、中国事業の先行き悲観 国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中