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報復関税より「手強い脅威」 米国企業が中国で直面したものは?

2018年7月2日(月)18時45分

6月27日、米中両国が全面的な貿易戦争へと向かう中、中国で販売されている米国ブランドは、より手ごわい脅威に直面しているのかもしれない。写真は、中国企業が製造する商品。北京で撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

米中両国が全面的な貿易戦争へと向かう中、中国で販売されている米国ブランドは、より手ごわい脅威に直面しているのかもしれない──。それは政府の後押しを受け、革新的製品で武装したチャイナブランドだ。

アップルやスターバックス、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の「パンパース」といった人気ブランドが市場で享受してきた支配的地位が脅かされており、数千億ドルを稼ぐ米国企業の中国ビジネスに長い影を落としている。

中国の清涼飲料やシャンプーといった総額6390億元(約10.6兆円)規模の日用品市場では昨年、中国ブランドが約75%のシェアを獲得。2013年の約67%からさらに数字を伸ばしたと、ベイン・アンド・カンパニーとカンター・ワールドパネルが中国都市部の4万世帯を対象に行った調査に基づく分析は示している。

パンパースやコルゲートの歯磨き粉、ミード・ジョンソンの粉ミルクなどアメリカ製品の市場シェアは、過去5年間で約10ポイント低下。その一方で、人気のノンシリコンシャンプーを販売する滋源や、地元原料にこだわったスキンケア商品を製造する百雀羚といった中国ブランドは急速にシェアを伸ばしているという。

「地元での競争は、外資にとって極めて重要な課題だ」と、同調査を共同で行ったコンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで、香港に拠点を置くブルーノ・ラネス氏は言う。「中国で成功するには、いまや従来の企業だけでなく、これまで思っていた以上に行動が早く、革新的な地元企業に勝たなくてはならない」

米国ブランドは長い間、中国でもてはやされてきた。米国のファストフードや飲料、コーヒーチェーンは都市部の至るところにあり、消費者はアメリカの粉ミルクやジーンズ、車やスマートフォン(スマホ)を好んで受け入れてきた。

しかし、そうした市場優位性は、特定分野で勝てる企業を生み出し、競争力の無い企業を排除して質を向上させることで、国内ブランドを育成しようとする中国の取り組みによって脅かされている。

高まる貿易摩擦によって、さらに状況が悪化する可能性があり、1800億ドル(約20兆円)を上回る米国企業の中国での収益を脅かしかねない。これは直近の会計年度で中国売上高を公表している米国上場企業121社の分析に基づく数字だ。

中国で積極的にビジネスを展開しているスターバックスやマクドナルド、ウォルマートなど、現地売上高を公開していない米企業の数字を加えれば、数字ははるかに大きくなるだろう。

アップルの中国売上高は昨年度448億ドル、P&Gは約52億ドル、スポーツ用品大手ナイキは42億ドルだった。

貿易不均衡や技術移転、また中国で企業が直面する障壁など、北京やワシントンで行われた米中通商協議が物別れに終わった今、貿易戦争の勃発が現実味を増している。

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