最新記事

AIロボット

「ハロ」じゃないけど......球状の宇宙飛行士支援AIロボ、宇宙へ

2018年7月3日(火)18時15分
高森郁哉

微重力環境で空中に浮かんだ状態で、移動や回転し、英語で会話する Photo: NASA Kennedy

<ドイツ航空宇宙センターが主導し、IBMなどが共同で開発したAIロボットが、国際宇宙ステーションに向けてロケットで打ち上げられた>

IBMなどが共同で開発し、「空飛ぶ脳」の愛称を持つ人工知能(AI)ロボットが宇宙船に積み込まれ、国際宇宙ステーション(ISS)に向けてロケットで打ち上げられた。宇宙船は7月2日夜にISSにドッキングし、AIロボットは宇宙飛行士のミッションを支援することになる。

正式名は「CIMON(サイモン)」

ドイツ航空宇宙センター(DLR)が主導し、委託を受けた仏エアバスと米IBMが開発したAIロボットで、正式名称は「The Crew Interactive MObile companioN(CIMON)」。

DLRの情報によると、1940年代の米SF小説を元に日本で制作され、米国でも放映されたテレビアニメ『キャプテン・フューチャー』に登場する、"空飛ぶ脳"ことサイモン・ライト博士を意識したネーミングだという(アニメのサイモンは透明ケースに収められた脳で、センサー、カメラ、音声処理装置を備え、自立飛行ができた)。

takamori0703a.jpg

『キャプテン・フューチャー』の原作、エドモンド・ハミルトン『鉄の神経お許しを 他全短編キャプテン・フューチャー全集11 』(創元SF文庫)

CIMONの仕様と能力

CIMONは直径32センチ、重量5キロのほぼ球体で、ディスプレイを搭載する部分が平面になっている。14基の内蔵ファンにより、微重力環境で空中に浮かんだ状態で、移動や回転を行える。

CIMONの紹介映像 - DLR

AI部分は、米クイズ番組で人間に勝利したことで知られるIBMの「ワトソン」の技術を応用。ワトソンのサービスはIBMクラウドから提供される。

CIMONは英語で会話でき、現在ISSに滞在中のドイツ人宇宙飛行士アレクサンダー・ゲルスト氏を主に支援する。具体的には、水晶を使った実験を共同で実施したり、動画を使ってルービックキューブを解いたり、CIMONをインテリジェントな空飛ぶカメラとして利用し複雑な医学実験を行ったりする予定だという。

打ち上げとドッキング

CIMONは、米航空宇宙局(NASA)から請け負った米スペースXの宇宙船「ドラゴン」に積み込まれ、米フロリダ州ケープカナベラルの空軍基地から6月29日早朝に打ち上げられた

ドラゴン宇宙船とISSは、日本時間7月2日18時30分からランデブーとキャプチャーを、22時からドッキングを行った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで

ワールド

クラウドフレアで障害、数千人に影響 チャットGPT

ワールド

イスラエル首相、ガザからのハマス排除を呼びかけ 国

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中