最新記事

アルツハイマー

アルツハイマー薬治験で認知機能低下30%抑制 バイオジェンとエーザイが発表

2018年7月26日(木)13時48分

7月25日、米バイオ医薬品のバイオジェンとエーザイは、共同開発するアルツハイマー型認知症治療薬「BAN2401」の第2相臨床試験で、プラセボ(偽薬)と比較して認知機能の低下が30%抑えられたと発表した。3月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

米バイオ医薬品のバイオジェンとエーザイ<4523.T>は25日、共同開発するアルツハイマー型認知症治療薬「BAN2401」の第2相臨床試験で、初期段階の患者グループに最高量を投与した結果、プラセボ(偽薬)と比較して認知機能の低下が30%抑えられたと発表した。

投与量が2番目に多い患者グループでも一定の効果が示されたが、統計的有意性はなかったという。

治験は初期段階の患者856人を対象に行われた。試験結果は、シカゴで開催されたアルツハイマー病協会国際会議で発表された。

発表に先立ち、アナリストらは治験で認知機能の低下を約20%抑えられれば、良好な結果といえると指摘していた。

両社は既に、臨床試験で最高量を投与した場合に有効性が認められたと公表していたため、バイオジェン株は今月に入って上昇していた。詳しい試験結果の発表を受けて、株価は引け後の取引で11%超下落し、339ドルを付けた。

ただ、専門家は総じて、今回の発表を肯定的に評価している。

米ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨー・クリニックの医師ロナルド・ピーターセン氏は、今回の結果はアルツハイマー病の治療研究を促進することになると指摘。認知症を引き起こす原因物質のアミロイド・ベータの蓄積量を減少させることでアルツハイマーの進行を防ぐという治療法の有効性について「再び期待を高めた」と述べた。

認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー型認知症の治療薬は開発試験の失敗が相次いでおり、有効な治療法の確立が待ち望まれている。

専門家らは記者へのブリーフィングで、エーザイが認知機能を評価するためにADCOMSと呼ばれる新たな指標を採用したことに懸念を表明。ただ、従来型の「ADAS―cog」と呼ばれる指標を使った場合でも、最高量を18カ月間投与した時点で、プラセボと比較して認知機能の低下が47%抑えられる結果が示された。

[シカゴ 25日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

制約的政策、当面維持も インフレ低下確信に時間要=

ビジネス

米鉱工業生産、3月製造業は0.5%上昇 市場予想上

ワールド

米中、軍事対話再開 22年以来初めて

ワールド

中東巡る最近の緊張、イスラエル首相に責任=トルコ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中