最新記事

軍事

中国軍用ドローンが世界を制する日

2018年6月2日(土)16時30分
シャロン・ワインバーガー

2015年の北京の軍事パレードに登場した中国製の軍用ドローン「翼竜」 Andy Wong/REUTERS

<価格の安さとそこそこの性能に引かれてアメリカの同盟国も続々と中国製軍用ドローンを購入>

ヨルダンの首都アンマン郊外にある軍用飛行場。世界中の軍需関連企業が最新兵器を売り込む年に1度の特殊部隊向け兵器展示会SOFEXが、今年はここで開催された。

会場では3人のアメリカ人ビジネスマンが目玉の展示物を賞賛していた。ドーム型のフロント部を持ち、翼の下に武器を搭載した大型ドローン(無人機)。それは奇妙な既視感がある光景だった。

「プレデターだな」と、1人が言った。ボスニア内戦やイラク戦争でも使われたアメリカ製ドローン、MQ1のことだ。

「いや、プレデターじゃない」と、別の1人が反論した。

展示中のドローンは中国製のCH4(彩虹4号)。このドローンは猛烈な勢いで世界中に拡散している。ヨルダンは15年にCH4を購入したが、機体を公開するのは今回が初めてだ。

かつては考えられなかった事態だ。MQ1と、より殺傷力の高い後継機MQ9リーパーは、10年以上前から軍用ドローンの代名詞だった。

だが状況は変わりつつある。中国がもっと高性能のドローンを開発したからではない。アメリカ勢がドローンを売らない国々に、中国が積極的な売り込みをかけているからだ。

ISIS攻撃に効果あり

アメリカが軍用ドローンの輸出を厳しく規制している間に、中国は市場に入り込んだ。ヨルダンは当初、米ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ製のMQ9を欲しがったが、購入を拒否された。その後、中国との商談が15年にまとまると、米共和党のダンカン・ハンター下院議員は「中国は好機を逃さない」と嘆いた。

それから2年以上、軍用ドローン市場における中国のシェアは大きく拡大している。現在までにMQ9を購入したのはイギリス、フランス、イタリアのみ。ヨルダンを含む他の同盟国は、CH4のような中国製ドローンに流れている。

アメリカは現在、遅ればせながら市場奪回に動きだしている。米企業は長年、思うように動けなかった。その理由の1つが特定の長距離巡航ミサイルとドローンの輸出を規制する国際協定、ミサイル関連技術規制措置(MTCR)の存在だ(中国は同協定に不参加)。

そこで4月、トランプ政権は「バイ・アメリカン」キャンペーンの一環として、軍用ドローンの輸出規制を緩和する新政策を発表した。ドナルド・トランプ米大統領の通商顧問ピーター・ナバロは、中国製ドローンをアメリカ製の「模倣品」と非難。「現政権の(ドローン)輸出政策によって、公正な競争条件が実現するだろう」と言った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻

ワールド

米、ウクライナの長距離ミサイル使用を制限 ロシア国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中