最新記事

米朝首脳会談

中国激怒──米朝首脳会談中止

2018年5月25日(金)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

訪米した韓国の文在寅大統領と会談するトランプ米大統領(5月22日) Kevin Lamarque-REUTERS

24日夜、トランプ大統領が米朝首脳会談中止を宣言すると、中国は激しい怒りを表明。北朝鮮が唯一最大の核実験場を完全破壊した直後に会談中止を宣言するとは信義にもとると即時に社説と論評を掲載した。

トランプ大統領の会談中止表明

日本時間の24日夜、ホワイトハウスはトランプ大統領が金正恩委員長宛てに書いた書簡を発表した。トランプ大統領の署名入りのその書簡には、6月12日に予定されていた米朝首脳会談の開催を中止する意向が書いてある。

北朝鮮が最近になってアメリカに対して示した怒りとあからさまな敵意があるこの時期に会談を開催するのは適切でないとする一方、「いつかあなたと対面することを期待している」とも書き、「もし首脳会談に関して考えが変われば、いつでも連絡をしてほしい」と結んでいる。

24日23:56、環球時報社説が激しい怒りを表明

中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」社評(社説)が、同日23:56に素早く反応。トランプ大統領の会談中止決定に対する激しい怒りを表明した。タイトルは「アメリカが米朝首脳会談を取り消したのは半島局面に対する強い衝撃」

以下、社評の主旨を概説する。

1.トランプがこのような宣告をしたのは、北朝鮮が同国の唯一にして最大の核実験場を爆破して数時間後のことだった。

2.北朝鮮が豊渓里(プンゲリ)にある地下核実験場を爆破したのは、北朝鮮が非核化の意思表明を証明した実質的な第一歩であった。

3.北朝鮮の国土面積は非常に狭く自然環境の条件にも限度があるので、北朝鮮にとって、もう一度同様の核実験場を建築することは実際上不可能であるほど困難を極める。

4.この困難な決意をようやく実行に移し、朝鮮半島非核化の意思が本当であることを表明してから数時間も経たない内に、このタイミングで会談中止を宣言するというのは(核実験場爆破の前ではなく、爆破した後に中止を宣言するというタイミングを選んだのは)、あまりに信義にもとる行為であり、「故意である」としか考えられず、北朝鮮側のアメリカへの憤怒を激増させるだろう。

5.豊渓里の核実験場の破壊は、紆余曲折はあっても、「対抗から、互いに相手の方向に向かい合おう」としてきた、ここ数カ月の北朝鮮の誠意と半島非核化の決意の表れだった。

その誠意が本物であるために北朝鮮は3人の拘束していたアメリカ人を解放したりするなどして、アメリカを信じようとする努力をしてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

家計の金融資産、9月末は2286兆円で過去最高更新

ビジネス

機械受注10月は2カ月連続増、判断「持ち直しの動き

ビジネス

貿易収支、11月は予想上回る黒字幅 対米輸出8カ月

ビジネス

日経平均は小幅反発で寄り付く、米雇用統計を通過 短
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中