最新記事

イギリス事情

「家賃はセックスで」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

2018年4月11日(水)18時50分
松丸さとみ

ホームレスになるのが怖くて

BBCの記事では、20歳の時に、そうとは知らずに「家賃は体で」という家に住んでしまった、という女性にインタビューした様子にも触れている。

大家とベッドをシェアするのが入居の条件だと気づいたのは引っ越した後だったという。体を触ろうとする大家を常に拒否しなければならなかったと話し、それ以上無理強いしてこなかった点については「大家に感謝している」とBBCに話した。

この家に引っ越す前はホームレスだった女性は、またホームレスになるのが怖くて、結局長い間そこで暮らしたという。BBCの記者がこの大家に直接話を聞いたところ、女性が住み続けたということは嫌ではなかったはずだ、と答えたという。

Rent For Sex: Landlords Offering Free Rooms For Sexual Favours

一方ガーディアン>は4月2日、すでに住んでいる家で、大家に「家賃を下げるから」と言い寄られたり、家賃を滞納していた時に体の関係を迫られ、拒否したら追い出されたりしたケースなどを紹介している。

警察に届ける人は非常に少ない

慈善団体レイプ・クライシス・イングランド&ウェールズのケイティ・ラッセル氏はガーディアンに対し、イングランドとウェールズの性犯罪法は性的な合意について、「その選択をする自由と能力がある時に、自分の意思で同意すること」と定義しており、「ホームレスになる恐れがある状況で、または住む場所を確保するという基本的な権利の交換として、誰かとセックスすることに同意することは、自分の意思で同意することと同じではない」と説明し、同意のない性的な行為は深刻な性犯罪だ、と述べた。

しかし、このような行為を警察に届ける人は非常に少ない。ピーター・カイル労働党下院議員は2017年4月、大家がこのような行為を改めない場合は法の整備をしてこの問題を解決する、とBBCに強い口調で訴えていた。しかし同議員は前述のガーディアンに対し、この1年で有罪判決はおろか逮捕者さえも出ていないと語っている。

ガーディアンによると、無料クラシファイド広告サイト「ガムツリー(Gumtree)」にもこのような広告がつい最近まで掲載されていた。しかしガムツリー側はカイル議員と協議したことを明かし、現在はブロックするシステムがあるとガーディアンに説明したという。カイル議員はクレイグズリストにも改善を求めるために連絡を取っているが、なしのつぶてだと語っている。


ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 8
    三船敏郎から岡田准一へ――「デスゲーム」にまで宿る…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中