最新記事

朝鮮半島

金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ

2018年4月27日(金)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

韓国芸術団の平壌公演を見る金正恩委員長(4月1日) KCNA/Reuters

本日、南北首脳会談が開催される。中朝首脳会談により金正恩の半島非核化への概要は表明された。では中国は、どのようにしてそれを実現させるつもりなのか。中国共産党系新聞「環球時報」社説に基づいて考察する。

金正恩が表現した半島非核化プロセス

3月26日から28日にかけて行なわれた中朝首脳会談では、金正恩委員長は習近平国家主席に向けて朝鮮半島の非核化に関して「段階的で、(周辺諸国と)歩調を合わせて」進める旨の発言をしている。もし韓国やアメリカが北朝鮮の行動を善意を以て観察し、歩調を合わせてくれるなら、徐々に段階的に朝鮮半島の非核化を実現させるという意味だ。

概念として、言葉を理解することはできるが、実際にはどういうプロセスを踏むのか十分に理解できるわけではない。金正恩の考え方は南北首脳会談で示されるだろうが、それもやはり南北共同声明で表現できる範囲内なので、解釈となると具体性を欠く可能性がある。

そこで中国共産党系新聞である「環球時報」が詳細に中国側から見た朝鮮半島の非核化プロセスを書いているので、先ずはそれを読解してみることにしよう。

「環球時報」の社説から

4月24日、環球時報は朝鮮半島における非核化に関する社説(中国語では社評)を掲載した。その趣旨に沿って、中国の心づもりを考察してみたい。そうすれば、金正恩の考え方も見えてくるはずだ。

以下に中国の主張を個条書き的にまとめてみた。なお、中国では「朝鮮半島」は「半島」としか言わず、「北朝鮮」は「朝鮮」としか言わないが、日本人に分かりやすいように「朝鮮半島」および「北朝鮮」と訳すこととする。

1.朝鮮半島の真の非核化と、こんにち北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射を停止するという現状との間には、まだまだ大きな隔たりがある。しかし平壌は非核化を語ることを拒んでおらず、その目標は実現性がないわけではない。

2.北朝鮮はすでに活動の重点を経済建設に置くと決定している。米韓日や西側諸国は、意識の中で妖怪化してしまっている北朝鮮という概念から抜け出さなければならない。正常な国家と交渉するロジックに則って、北朝鮮が最終的に核廃棄に向かうことを推進していかなければならない。

3.北朝鮮は、きれいさっぱりと核・ミサイル実験中止を宣言した。ワシントンは絶対にこれを「圧力強化の結果」と受け止めてはならない。もしワシントンが「圧力強化の結果」と勘違いして、北朝鮮に核放棄させるために今後さらに圧力を強化させるようなことをしたら、それは非常に危険で、北朝鮮は絶対に承諾しないだろう。それは逆効果であるだけでなく、これまでになく悪化した状況を招くからである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油価格下落、世界的な株安が圧迫

ビジネス

EXCLUSIVE-日産、ネクスペリア問題で国内工

ワールド

ブラジル大統領「気候変動対策は寄付より投資」、基金

ビジネス

マネタリーベース10月は7.8%減、18年ぶり減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中