最新記事

日本社会

森友問題、責任所在を曖昧にした日本の習慣「ソンタク(忖度)」

2018年3月19日(月)17時40分

●「ソンタク」はなぜ問題か

森友学園への国有地売却に関与し、決済文書を改ざんした当局者がもし「ソンタク」したのであれば、彼らの上司の不正を証明することは、少なくとも法的には難しい可能性がある。

「安倍首相は強い指導者だ。それ故、官僚たちは直接指示されなくても、不誠実であったり、時には法に触れたりと、さまざまなことを行った」と、ある連立与党議員は匿名で語った。

「だが、安倍首相が直接指示しなかったのであれば、『ソンタク』の問題で終わるだろう。法的責任と政治責任、そして倫理的な責任は異なる」

一方、麻生財務相は、直接指示は下していないものの、財務省の監督責任を問われ、辞任圧力にさらされている。

安倍首相が9月に行われる自由民主党の総裁選挙で勝利し3期目を迎えられるか、それとも早期退陣を迫られるかどうかは、首相の支持率低下があるか、またその低下の度合いによるだろう。

●「ソンタク」は日本だけか

安倍政権が、幹部人事の決定権を手中に収め、霞が関の官僚機構をより強力に掌握しているため、官僚が「ソンタク」する動機となったのかもしれない。ただ、どこであっても職員は上司の意向を汲もうとするものだ。

「上司の顔色をうかがうことは、どこにでもあることだ。だが日本では、それがより高尚な芸術形式にまで進化した」と前出のキングストン教授は語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Linda Sieg

[東京 15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗幣インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ワールド

米高官、中国レアアース規制を批判 信頼できない供給

ビジネス

AI増強へ400億ドルで企業買収、エヌビディア参画

ワールド

米韓通商協議「最終段階」、10日以内に発表の見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中