最新記事

マリファナ

医療大麻の新時代到来か 「大麻先進国」カナダ企業が薬品開発を加速

2018年3月1日(木)15時40分

2月16日、医療用大麻を栽培するカナダのキャノピー・グロースが、世界の製薬大手に挑もうとしている。写真は、加オンタリオ州にある同社の大麻栽培施設で1月撮影(2018年 ロイター/Chris Wattie)

医療用大麻を栽培するカナダのキャノピー・グロースが、世界の製薬大手に挑もうとしている。

同社は2016年後半、大麻に含まれる化学物質カンナビノイドをベースとする医薬品を製造し、特許を取得して政府から承認を得るため、キャノピー・ヘルス・イノベーションを設立した。

不安神経症から慢性痛、多発性硬化症や小児てんかんに至るまで、さまざまな疾患に対する大手治療薬との競合を目指す、こうしたベンチャー企業の数は、カナダではまだ多くはないが増えてきている。

これら企業は、錠剤や吸入剤、液剤や塗布剤として販売される処方薬の開発に力を注いでいる。その目的は、大麻を主流の医薬品として医師や保険会社に認めてもらうことだ。

「キャノピー・ヘルスのような企業が今後どんどん出てくる。要するに、医療用大麻2.0の到来だ」と、キャノピー・ヘルスのマーク・ウェイン最高経営責任者(CEO)はインタビューでこう語った。

「これは大麻に関する知的所有権を求めるゴールドラッシュ期で、その動きは加速している」

カナダの緩い規制や成熟した大麻業界、そして自由な資金移動は、そうした企業に、米国などの大麻企業を行き詰まらせた法的・政治的リスクなしに研究を進めることのできる、またとない機会を与えている。

米連邦法が依然としてあらゆる形態の大麻を禁止しているのに対し、カナダは2001年に医療用大麻を合法化し、今年は嗜好(しこう)用も合法化する。カナダ政府は、医療用大麻の完全合法化に必要な研究と臨床試験を歓迎しており、資金提供さえ行っている。

現在、大麻を輸出しているのはカナダとオランダだけであり、カナダ企業は、医療用大麻が最近合法化された20カ国以上において即座に有利な状況にある。調査会社ブライトフィールド・グループは昨年、世界の医療用大麻の市場規模が2021年までに314億ドル(約3.3兆円)と4倍に拡大すると予測した。

現在、カナダの医療用大麻は、喫煙できたり最近ではオイル抽出された嗜好用として使われるものとほとんど変わらない。医療用大麻の栽培、製造、販売を行うため、70社超が保健省からライセンスを取得している。その半分以上は2017年、あるいは2018年に認められている。

キャノピー・ヘルスなどの企業は現在、カンナビノイドの含有量をさまざまに変えて新たな処方薬の開発に着手している。例えば、即効性あるいは持続性のある錠剤がいいのか、定量吸入剤がいいのか、またはカンナビノイドと他の医薬品やサプリメントを組み合わせて効果を高めるのがいいのか、ベストな投与システムを見つけ出そうとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中