歓迎すべき変化? マスメディア時代から「小さな公共圏」時代へ

Alessandro Vallainc-iStock.
<論壇誌『アステイオン』の30周年を記念したシンポジウムで、ネットで読者の反応が可視化される時代には読者を満足させられる規模、つまり「小さな公共圏」でしか、メディアが機能しないことを「ゲンロン」編集長の東浩紀が指摘した。今後のマスメディアの機能やあり方について、メディア研究者が論じる>
1986年に創刊された『アステイオン』は、ポスト冷戦とグローバリゼーションの30年と歩みを共にしてきた。この間、イデオロギー対立の時代は終わり、中間層の増大とともに「豊かさ」や教養が平準化し、広い意味でのリベラリズムが知識人のなかで支配的な価値観となっていった。居丈高の権威主義や集団主義を排し、中道で柔らかく議論する人々の出現を迎えようとする兆しが見えていた。
しかし、21世紀に入って目の当たりにしたのは、機能不全を起こしつつある論壇やジャーナリズムの姿であり、インターネットにおける極端な「右/左」の対立とその世界的広がりであり、左右両派に見られる排除の論理とポピュリズムの台頭だった。
高等教育が大衆的なものとなったにもかかわらず、大学やマスコミが市民の教養や判断力を啓蒙する基盤的なメディアとなるという前提は成立しなくなってきている。「アウフヘーベン」という言葉が2017年の新語・流行語大賞候補にノミネートされ、注目されたのは記憶に新しいが、その理由は、この横文字の意味の分からなさにあったといってもいいだろう。
排除の論理とポピュリズムに対する格闘という主題で真っ先に思い浮かぶ20世紀の知的遺産は、ホロコーストや大衆的熱狂という時代の渦に呑み込まれながらも、様々な矛盾や対立のなかにあって、理性的で規範的な対話とコミュニケーションの可能性を模索していたフランクフルト学派であろう。ハーバーマスによる「公共圏」という概念が、その理論的成果のひとつであることは周知の事実だ。
公共圏は、コミュニケーションによる相互了解を中心的な価値に据えた生活世界のひとつの空間であり、国家や市場からは自律した市民社会的な圏域である。もともと中世の封建社会では国王、領主、聖職者が自らの威光を身体的・儀礼的に民衆に示すことで具現的公共圏を成立させていたが、近代国家の形成や資本主義化のプロセスのなかで、次第に市民的公共圏が確立していった。
西欧では17世紀後半から18世紀にかけて、コーヒーハウスや社交サロンなどを拠点として文化や芸術を議論する人々が現れ、市民的な文芸的公共圏が誕生した。その空間では、社会的な地位の平等が要求され、それまで自明とされてきた様々な制度が批判に晒されていった。こうした討議の空間は、雑誌や新聞などの活字メディアの広範な流通によって活性化され、議論の公開性も高まっていった。
資本主義化が進展していくと、議論の主題は文芸から政治へと移っていき、文芸的公共圏のなかから次第に政治的公共圏が形成されていった。新聞のような活字メディアは領主らの統制を拒絶し、政治的な論議の媒体となり、公共性の所在は権力から市民の手へと移り変わった。市民は読み書き能力を身に付け、印刷技術に媒介されることで、世界を分析し批判する力を我が物にしていったのである。ハーバーマスは、規範的な公共圏が存在していたことを歴史的に明らかにすることによって、未来に向けて、ありうる公共圏の可能性を探求していた。
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