最新記事

中国社会

北京から「底辺住民」を追い出す中国の不条理

2017年12月19日(火)16時40分
ジョン・パボン(フルクラム・サステナビリティ・コンサルティング創設者)

■スマートフォンなどで注文すれば、レストランの料理を届けてくれる便利なオンライン出前サービス。中国では今年上半期にこのサービスの市場が41.6%拡大した。今では3億人の中国人が自宅やオフィス、さらには高速鉄道の車内にまで料理を届けてもらっている。大都市の通りをバイクで走り回る300万人以上の配達員の多くは出稼ぎ労働者だ。

■電子商取引大手アリババ・ドットコムは11月11日の「光棍節(独身者の日)」に毎年24時間のタイムセールを実施する。今年の売り上げは約260億ドル。膨大な数の商品は宅配会社数社を通じて顧客に届けられる。光棍節の注文数は8億件以上。配達はオンライン出前と同様、出稼ぎ労働者が担う。

■私が住む上海のマンションの向かい側には市内屈指の超高層ビルが建つ予定だが、昼夜を問わず工事現場で汗を流しているのも出稼ぎ労働者だ。中国の出稼ぎ労働者の約20%は建設業に従事している。都市の開発事業は彼らなしには成り立たない。

民間が支援に乗り出す

オンライン出前、宅配、建設――この3部門だけで中国全土で6500万人近い労働者が雇用されている。その圧倒的多数は出稼ぎ労働者だ。彼らがいなくなれば都市住民の生活が不便になるだけではない。中国がグローバル経済の覇者であり続けるには、テクノロジー、輸送、都市開発部門の成長が不可欠だ。この3部門を下支えする人々を排除すれば、影響は広範囲に及び、中国の国際競争力まで低下するだろう。

寒空の下、路頭に迷う人々を救おうと、早くも援助団体が職の斡旋やルームシェアの仲介に乗り出している。電子商取引大手の京東商城も自社の配達員に一時的な住居の提供を決めた。

彼らは分かっているのだ。低端人口は現代のグローバル社会を下支えする、なくてはならない働き手だ、と。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

From thediplomat.com

[2017年12月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、スパイ懸念の中国大使館移設計画を承認 首相の訪

ビジネス

トランプ大統領、来週にも次期FRB議長決定とベセン

ビジネス

内需を成長原動力にと習主席、先進的製造業の発展促進

ワールド

タイ中銀、外貨収入の本国送金規制を緩和 バーツ高対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 4
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中