最新記事

テクノロジー

中国整形「サイボーグ」の素顔は発明家

2017年12月1日(金)17時30分
エミリー・ゴデット

女性らしさと技術が共存

ドハティの一件は、欧米のテクノロジー関係者が自分のような人間に取る態度のいい例だと、ウーは言う。中国に来る欧米人男性は地元女性にちやほやされて当然と考え、こちらが性的な誘いなどを断ると激怒する、と。

だが、性差別的なアメリカ人が理解していない点がある。ウーが住む深圳では、テクノロジーとアートが交わる領域に「女性らしさ」が存在しても不思議ではないという事実だ。

80年に経済特区に指定された新興都市の深圳は、映画『ブレードランナー』や『AKIRA』に出てくる近未来都市と似ている。ウーが人工の巨乳を強調する露出度の高い服装をしても、ここでは誰も気にしない。

移民都市という深圳の特徴は、超高速で変化するスタートアップ文化の醸成に一役買っている。「ここの住人は若くてハングリー。テクノロジーをツールにして金持ちになろうとしている」

magt171201-wu04.jpg

Naomi Wu

その深圳でも、「専門職タイプ」の女性は周辺的存在にとどまることを強いられるという。そんななかでウーは、テクノロジー業界のあらゆる女性の擁護者として自分を定義する。「私よりずっとすごい仕事をしている女性がたくさんいる。できる限りのことをしてその存在を知らせ、女性のコミュニティーに貢献したい。私は派手だけど、チームプレーヤーでもある」

ウーら革新者がみるところ、業界の未来はアプリ開発や人工知能(AI)にあるとは限らない。ハードウエアやウエアラブル技術など、触れることが可能なものこそが目指すべき道だ。

深圳は「ハードウエアのシリコンバレー」だと、ウーは言う。クリエーター支援プラットフォーム、パトレオンの自身のページにはこう記す。「あなたがこのページを読んでいる携帯電話やコンピューターはここで作られたものかも。それも、私の幼なじみの女性の手で」

女性たちはまた1人、心強い味方を得たのかもしれない。

本誌2017年12月5日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中