最新記事

韓国

「原子力潜水艦が欲しい!」韓国の望みは現実的か

2017年11月28日(火)17時30分
フランツシュテファン・ガディ(ディプロマット誌アソシエートエディター)

米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦「マイアミ」 LT. Scott Miller-U.S. Navy

<米韓首脳会談で議論されたと報じられたが、購入するにも建造するにも課題は山積>

韓国政府の関係者によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はトランプ米大統領との首脳会談で、韓国海軍の攻撃型原子力潜水艦の開発や調達について議論したという。詳細は不明だが、この件が議題に上ったこと自体、原潜保有に対する韓国政府の意欲の高まりを示している。

主な目的は、北朝鮮への備えだ。北は弾道ミサイル発射用の新型ディーゼル潜水艦の建造などで攻撃力を高めている。原潜はディーゼル方式と違って長時間の潜航が可能なため、弾道ミサイルを搭載した北朝鮮の潜水艦を効率よく追跡できる。

しかし、韓国海軍による原潜の運用は現実的な話だろうか。

まず、アメリカがバージニア級、あるいは退役が近いロサンゼルス級原潜を韓国に販売またはリースするとは到底考えられない。核拡散への懸念や、機密性が高い技術を共有することへの抵抗感があるからだ。それに、アメリカ製の原潜は韓国が運用するにはコストが高過ぎる。

「アメリカが外国に原潜を販売したことは一度もない」と、ある韓国政府関係者は9月に語った。従って「(原潜を)われわれが導入するなら、自前で開発することになるだろう」

敵を24時間監視するため、韓国海軍は最低でも3隻は配備したいようだ。その購入費にインフラ整備を加えると(運用コストを除いても)、総費用は90億ドル近くに上るとの試算がある。

韓国メディアによれば、03年に国産原潜の建造計画がひそかに進められたが、翌年にそれが明るみに出てIAEA(国際原子力機関)の知るところとなり、取りやめになったという。だが事業が中止になる前に、韓国は、潜水艦用の小型原子炉の基本設計を完了していたらしい。

燃料の確保が最大の課題

原潜保有という文政権の夢を実現するには、政治的にも技術的にも多くの問題を解決する必要があるだろう。

最大の課題の1つは、燃料の確保だ。15年に改定された米韓原子力協定で、韓国は軍事目的のウラン濃縮と使用済み燃料の再処理を禁じられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

ECB、年内に複数回利下げの公算=ベルギー中銀総裁

ワールド

NATO、ウクライナへの防空システム追加提供で合意

ビジネス

中国、国内ハイテク企業への海外投資を促進へ 外資撤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中