最新記事

中国軍

中国軍がグアムを標的に軍事演習、太平洋進出を米警戒

2017年11月1日(水)17時35分
トム・オコナー

今回ハワイ島に近付いたのと同じ、中国軍のH6爆撃機(2013年10月27日撮影) Joint Staff Office of the Defense Ministry of Japan/Reuters

<グアムは北朝鮮だけでなく、太平洋の覇権を狙う中国の脅威にもさらされている>

米軍関係者は10月31日、米領グアム島の米軍基地を標的にした軍事演習を中国が実施したと明らかにした。緊張が続く太平洋上で軍事活動を活発化させる中国の動きに、米国防総省は警戒を強めている。

米国防総省の関係者は米軍事専門紙ディフェンス・ニュースへのブリーフィングで、中国軍のH6爆撃機が「グアム攻撃」を想定した「異例の」飛行訓練を行い、ハワイ島近くにも爆撃機を飛ばしたと明らかにした。グアムとハワイの米軍基地は、アメリカのアジア太平洋戦略の要だ。中国の急速なアジア太平洋進出は、アメリカの安全保障を脅かす行為だと、ジョセフ・ダンフォード米合同参謀本部議長はみる。ディフェンス・ニュースによればダンフォードは、アメリカが太平洋上で軍事プレゼンスを保つ重要性を繰り返し強調した。

「太平洋上から米軍を排除しようとする人々がいる」「彼らに伝えたい。アメリカは太平洋の大国だ。これからもここに留まる。アメリカの経済的繁栄はこの地域の安全保障と政治にかかっている」

米中間に火花

ダンフォードはさらに続けた。「中国の脅威が念頭にあると受け止められても構わない。これが、国際秩序に沿ったやり方だ」「アメリカの国益を最大限にすることに焦点を絞っている。そのためには一切妥協しない」

米海空軍の基地があるグアムとハワイは今年に入り、北朝鮮からの核攻撃の脅威にさらされている。ドナルド・トランプ米大統領が8月、「世界が見たこともないような炎と怒りに直面する」と北朝鮮を脅し、核・ミサイル開発を止めさせようとした直後、北朝鮮軍が金正恩朝鮮労働党委員長に提出したのが、具体的なグアム攻撃計画。中距離弾道ミサイル「火星12」を4発同時にグアムに撃ち込む案だった。

金は後日、グアムへのミサイル発射計画を一時保留すると表明。アメリカが朝鮮半島周辺で軍事増強をやめ、日本の自衛隊や韓国軍との合同軍事演習を実施しなければ、計画を実行しないとし、いったんは緊張が緩んだ。だがアメリカが8月下旬に米韓合同軍事演習を実施し、9月の国連演説でトランプが北朝鮮を「完全に破壊」すると言って脅迫すると、北朝鮮は再び態度を硬化。「アメリカの狂った老いぼれを必ず火で鎮める」と言い返した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中