最新記事

貿易

イケメン首脳2人のトランプ封じはTPP11

2017年11月28日(火)16時20分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン

対アジア貿易に望みを託すメキシコのペニャ・ニエト大統領(左)とカナダのトゥルドー首相(APEC首脳会議で) REUTERS

<NAFTA再交渉で米政府が難題を吹っ掛けても、メキシコとカナダが強気で拒否できる訳>

トランプ米大統領が就任後に真っ先にしたことの1つがTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱だ。アメリカを除く参加11カ国は11月10日、新協定を発効させることで大筋合意した。

これでアメリカは経済が急拡大しつつある環太平洋諸国との貿易で一歩出遅れることになる。おまけにNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉の第5回会合でカナダ、メキシコから譲歩を引き出すトランプのもくろみまで危うくなった。

NAFTA再交渉では、トランプ政権は自動車の部材調達比率の引き上げと協定の5年ごとの見直しという厳しい要求を突き付けている。これに抵抗するカナダとメキシコは、TPP11発効のめどが立ったおかげで強気で交渉に臨める。

貿易協議では「締結済みか締結目前の他の協定があれば、交渉を有利に進められる」と、ウッドロー・ウィルソン国際研究センターメキシコ研究所のダンカン・ウッド所長は言う。

現在のNAFTAの「原産地規則」では自動車の場合、域内3カ国製の部材が62.5%以上なら関税がかからない。だがNAFTAのせいでアメリカの雇用が減ったと考えているトランプ政権は50%以上をアメリカ製とすることを提案。アメリカの自動車業界ですら既存のサプライチェーンに大混乱を来すとして、この案に反対している。

TPP11(メキシコとカナダも参加)の自動車に関する原産地規則はこれより緩やかなので、米政府はNAFTA再交渉でこの案をゴリ押ししにくくなる。

「トランプ政権はTPP11がNAFTAの交渉に与える影響を完全に読み違えていた」と、シカゴ国際問題評議会のフィル・リービー上級研究員は言う。

トランプのゴリ押しぶり

対米貿易に大きく依存してきたメキシコはTPP11に加わることでほかの選択肢を手に入れたと、在米メキシコ大使館の経済問題チームの元責任者アントニオ・オルティスメナは指摘する。「今でもメキシコにとってNAFTAは最も重要だが、唯一の頼みの綱ではなくなった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中