最新記事

中国共産党

習近平思想を党規約に――新チャイナ・セブン予測(5)

2017年10月17日(火)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

5年前、中共中央総書記に就任した習近平 Carlos Barria-REUTERS

第18回党大会の七中全会が閉幕し、第19回党大会で習近平思想を党規約に書き込むことがほぼ確実となった。習近平思想とは何かとともに、そこに如何なる意義が潜んでいるのかを七中全会の公報から読み解く。

一期目の終わりに党規約に個人名入りで書く意味

今月11日から開かれていた第18回党大会の七中全会が14日に閉幕した。この日を以て次期チャイナ・セブンの名簿が最終決定し、第19回党大会の一中全会で決議される。  

新華社の発表によれば、七中全会では党規約の修正案も採択され、具体的な文章は秘密にされているものの、少なくとも「習近平思想」(正式名称は未公開)を党規約に書き入れることは確実であることが窺われる。

現在の党規約の冒頭には、「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表(江沢民政権)、科学的発展観(胡錦濤政権)」が掲げられており、鄧小平理論以来、基本的には政権が終わった時点で書き加えることになっていた。「科学的発展観」は胡錦濤政権第一期目の終わり(2007年の第二期目が始まるときの党大会)に党規約の中に出ては来るが、かなり後ろの方の本文の中に現れただけで、冒頭のイントロ部分に入れられたのは、2012年11月の第18回党大会においてである。

また個人の名前を党の基本指針として党規約に書き込むのは、鄧小平止まりとしようという暗黙の了解があった。

しかし、今回は、この二つの「暗黙の了解」(慣例)を破ることになる。

おまけに「~理論」ではなく、「~思想」と、「毛沢東思想」以来だ(「習近平の領導思想」になる可能性もあるが、いずれにせよ、「習近平・・・思想」だ)。

その意味で、習近平国家主席は「毛沢東と並ぶ存在」に格上げされると言っていいだろう。

毛沢東思想に並ぶ意義とは?

中国建国の父、毛沢東が、「マルクス・レーニン主義」では飽き足らず(正確には、気に入らず)、敢えて中国共産党の基本理念を「毛沢東思想」としたのには理由がある。これは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』のp.271に書いたが、延安にける毛沢東との口論を克明に記録した王明が『中共五十年』の中で以下のように述べている。

――1941年9月、毛沢東は延安で「私はマルクス・レーニン主義ではなく、毛沢東主義を作ろうと思っている。"主義"を作って党内に浸透させておけば、私が死んだ後も人民が私を否定することはできなくなる。だから中国共産党思想を毛沢東思想に塗り替えるのだ」という趣旨のことを言った(ここまで引用)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル生理学・医学賞、マイクロRNA発見のアンブ

ワールド

駐米ロシア大使、任期満了し帰国 後任指名するとクレ

ワールド

ヒズボラ、イスラエル第3の都市に初のミサイル攻撃 

ビジネス

賃上げ「継続必要」の認識広がる、消費も下支え=日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 2
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」の中国が世界から見捨てられる
  • 3
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決闘」方法に「現実はこう」「想像と違う」の声
  • 4
    新NISAで人気「オルカン」の、実は高いリスク。投資…
  • 5
    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「…
  • 6
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 7
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 8
    常勝軍団の家族秘話...大谷翔平のチームメイトたちが…
  • 9
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 10
    もう「あの頃」に戻れない? 英ウィリアム皇太子とヘ…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 8
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中