最新記事

EU

欧州が恐れる「融和のメルケル時代」終わりの始まり

2017年9月29日(金)13時48分


大きなリスク

こうした懸念は恐らく杞憂だろう。メルケル首相は生き残り術に長けており、異なる陣営間の調停をする際に、最も力を発揮する。CSU、緑の党、FDPなど、まったく異質な政党に協力し合うことを納得させたいと思うなら、今後数カ月はそうした調停を行う必要がある。

かたくななFDPの主張を思えば、ユーロ圏改革に向けたマクロン大統領との合意はこれまでよりも困難になるが、それ以外の欧州防衛協力などの優先課題は、SPDが連立政権から抜けることで、かえって楽になる可能性がある。

欧州委員会の上級幹部は、数カ月にわたるドイツの連立協議によって、実際にはマクロン大統領のアイデアが勢いを増すための時間の余裕が生まれるかもしれないと語る。

だが、連立協議にはリスクも伴う。

12年間政権の座にあるメルケル首相は、連立パートナーの勢力を弱めるという評判が立っている。今回の選挙で犠牲になったのがCSUとSPDだ。4年前はFDPだった。少数与党としてメルケル首相の連立内閣に参加した後、FDPは戦後初めて連邦議会の議席をすべて失ってしまった。

こうした過去があるため、連立候補となる政党はどこも高めの要求を突きつけてくるだろう。

「安定多数政権を形成することに失敗したら、恐らくそれがメルケル時代の終わりを告げることになるだろう。そして、さらに広く見れば、新たな政治的混沌の前触れとなる可能性がある」。ドイツで外相経験のあるヨシュカ・フィッシャー氏は26日、プロジェクト・シンジケート向けの寄稿でそう記した。

「ドイツに、あるいは欧州に、そうした混沌を望む人は誰もいない」

(翻訳:エァクレーレン)

Noah Barkin

[ベルリン 9月26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

グーグル、ドイツで過去最大の投資発表へ

ワールド

マクロスコープ:高市「会議」にリフレ派続々、財務省

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中