最新記事

北朝鮮問題

中国は北への石油を止められるか?----習近平トランプ電話会談

2017年9月7日(木)16時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国は必ず最後は「人道的」という言葉を使って、全面的な「断油」(石油禁輸)を回避しようとする。だから、9月11日の安保理決議に関しては、少なくとも拒否権を持つロシアが反対票を投じ、中国は「それに倣(なら)う」という形を取るのではないかと考えられる。

狙われるのは日本――なぜ日本がそのツケを

たしかに北朝鮮がさらに暴走し、在日米軍基地を第一に狙うであろうことは想像に難くない。もともと日本が参戦していなかった朝鮮戦争のツケを、こうして日本国民が命を危険にさらされるという形で払わされるのは、とんでもないことだ。

日本が巻き込まれるのは日米安保があるからであり、アメリカに物言えない日本があるからだろう。

もちろん日米安保条約によって日本がアメリカに守られているのは十分に承知している。それは重要なことだ。

しかし、何度も書いて申し訳ないが、北朝鮮問題はアメリカが朝鮮戦争の休戦協定に違反したことから始まっていることを忘れないようにしてほしい。

北朝鮮が朝鮮戦争を始めたのだから、元をただせば北朝鮮が悪いというのは間違いない。北朝鮮が38度線を越えようとしたのは、そこに38度線が引かれたからだ。

引いたのは誰か。

アメリカである。

第二次世界大戦の終戦直前、旧ソ連が朝鮮半島全てを占領しようとしたので、慌てて当時のトルーマン大統領が待ったをかけた。その瞬間、ソ連軍は38度線近くまで進軍してきていたので、トルーマンは二日間で決断し、38度の場所に南北分岐線を引いた。

ソ連に何としても対日戦争に参加して、日本軍を敗退に追いやって欲しいと懇願したのは当時のアメリカのルーズベルト大統領だ。

ルーズベルトは親共で、トルーマンは反共。

ソ連を対日戦争に引きずり込んでおきながら、ルーズベルトはほどなく他界した(これらの詳細は拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』の第3章「北朝鮮問題と中朝関係の真相」で明らかにした)。

もし日本が絡んでいるとすれば、この38度線構築の前段階にあると言えなくはない。しかし、国際社会はそんなに歴史をさかのぼって審判を下すのではなく、最後の国家間協定で論じるのが原則だろう。その意味では休戦協定に違反しているのはアメリカであることを、トランプは認識すべきだ。日本は、その事実を直視することに関して、アメリカを説得する役割を担うべきではないのだろうか。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中