最新記事

債務

世界の政府・民間の債務合計1京8000兆円  FRB資産縮小で収縮に警戒

2017年9月22日(金)17時50分

不動産にもマネーが流入。不動産会社Savillsの調査によれば、世界のすべての不動産価格の合計は、約2京4000兆円(2015年末)。マネックス証券・執行役員の大槻奈那氏によると、BISデータの住宅価格上昇率から推測される世界の不動産価格の上昇幅は、過去10年で6400兆円にのぼる。

大槻氏は「現在は、サブプライムのときのような大きな問題があるわけではない。しかし、膨張したマネーがみな同じペースで緩やかに縮小していけばいいが、リスクが高いとみられている業界や企業などからの資金流出は、強く速くなりがちなのが過去の例」と語る。

金融政策が「正常化」されたなかで、経済が自立して成長していけるのか。一向に上がらない長期金利やインフレ率が、疑問符を投げかける。資産効果(株高による消費刺激)に多くを頼っているとすれば「経済がしっかりしているから、株は大丈夫」との楽観論には影が差す。

日本も政府部門が膨張

日本も債務膨張に歯止めがかからない。BISによると、政府と民間の債務合計は約1992兆円。この10年で357兆円増加したが、民間部門が減少しているのに対し、政府部門は371兆円の増加だ。20年の財政健全化目標が先送りされれば、さらに歳出拡大圧力が強まる可能性は大きい。

間接的ではあるが、政府の債務膨張を許している要因の1つに日銀の存在がある。超低金利によって国債の利払い費が抑制され、国債は発行しやすい環境だ。さらに市場を通じているとはいえ、年間60─80兆円のペースで長期国債を買い続けている。

日銀の資産は約500兆円。量的・質的金融緩和策(QQE)導入前の13年3月末と比較すると3倍超に増加した。国債だけでなく、ETF(上場投資信託)も年間6兆円ペースで買い続けており、売り越し基調に転じている海外勢とは対照的に、日本株の筆頭買い主体となっている。

米株ほどの過熱感はないが、東証1部の時価総額は過去最高を更新。時価総額を名目GDPで割った「バフェット指数」は1倍を上回り、調整サインが点滅している。

FRBの資産縮小を機に、海外勢が緩和マネーを株式市場から引き揚げたとしても、日銀のETF買いが日本株を支えるかもしれない。緩和長期化は円高圧力を弱めるだろう。歳出増があれば短期的に景気を支えるのは間違いない。

しかし「財政ファイナンス」の色彩が一段と濃くなったとしても、警告を示すはずの債券市場は、日銀による国債大量購入の影響で機能低下が否めない。「円高リスクよりも大きなリスクを抱え込むことになる」と日本総研の河村小百合氏は懸念している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

[東京 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ビジネス

訂正米アップルCEOがナイキ株の保有倍増、再建策を

ビジネス

仮想通貨交換コインベース、予測市場企業を買収 事業

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中