最新記事

アメリカ経済

世界金融危機から10年 景気回復し完全雇用でも賃金上昇鈍る「謎」

2017年7月11日(火)09時02分

7月7日、世界金融危機の発生から10年を経た米経済について、エコノミストの間では労働市場は完全雇用の状態にあるとの見方が大勢だ。しかし、それにもかかわらず賃金は上昇率が鈍るという「謎」に覆われている。米カリフォルニア州で開催されたジョブフェアで2014年10月撮影(2017年 ロイター/Lucy Nicholson)

世界金融危機の発生から10年を経た米経済について、エコノミストの間では労働市場は完全雇用の状態にあるとの見方が大勢だ。しかし、それにもかかわらず賃金は上昇率が鈍るという「謎」に覆われている。

米労働省が8日公表した6月雇用統計は時間当たり賃金の前年比伸び率が2.5%にとどまり、景気の好調が続いて労働力が不足しているというのに、過去2四半期は加速するどころか足踏みが続いた。

賃金上昇の鈍さは先進国に共通した現象で、多くの国では米国よりも景気回復のペースが遅い。

これまで何十年もの間、賃金上昇をけん引してきたのは労働生産性の改善だった。しかし足元では、活発な投資や技術革新によって働き方が根本的に変わる兆候が見当たらない。米国の生産性の伸び率は2005年以降に平均1%と、1990─2004年の水準の半分に落ち込み、過去5年間の年間伸び率は0.5%にとどまっている。

JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は6月雇用統計発表後に「賃金上昇が芳しくない理由は、影のスラック(緩み)、グローバル化に伴う交渉力の低下、脱組合化、オートメーション化など枚挙にいとまがない。しかし悩ましいのは、少なくとも雇用統計の平均時給でみると、2015─16年に明らかに加速していた賃金上昇がこの2四半期になって鈍ったことで、これは不思議だ」と記した。

米国は雇用者数からみると、連邦準備理事会(FRB)が年内追加利上げが可能な軌道にあるというのがエコノミストの一般的な見方だ。しかし賃金の伸びが鈍いため、政策金利の引き上げ幅は自ずと限定される。個人消費が7割を占める米経済の長期的な見通しを懸念する声も上がっている。

国際通貨基金(IMF)のデータによると、先進国では国民所得のうち労働者に分配される比率は1970年に55%だったが、2015年には40%弱に低下した。技術の変化やグローバル化が主因だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、月間では主要通貨に対し2%

ワールド

トランプ氏、議会承認済みの対外援助予算を撤回へ 4

ワールド

訂正-トランプ氏、ハリス前副米大統領の警護打ち切り

ビジネス

再送米PCE価格、7月前年比+2.6% コアは5カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中